追跡
僕達はさっきの宅配便の男が家を出るのを待って、後をつける事にした。
【ねぇ、あの男、見覚えがあるよ。…僕を轢こうとした人に似てる】
【本当だな。それに確かにオルラルドの匂いがプンプンするな】
リツが言った。
僕はまだ、この良く効く鼻に慣れなかった。
効きすぎて色んな匂いが常に鼻の奥を突いてくる。だから正直鼻で呼吸するのはキツい。
この良く聴こえる耳も、見えすぎる眼も、全てが桁違いで、人間の身体だった頃は考えられない。
【ユリファはどうやってこの身体に慣れたの?】
僕はユリファに聞いてみた。
【私は産まれた時からオルラルドと過ごしてきたからな。サフィアと共有した時は驚いたよ。イーエデンの住民でも、共有の存在は秘密なんだ。だから共有した者しかその存在はしらないからな。】
【そうなの?】
【あぁ、でもうれしかった。共有するにはオルラルドと絆で結ばれないと出来ないからな。だからサファイアと共有した時は感動だった!直ぐに受け入れられたんだ。それに今までサフィアには守られてばかりだったから、今度は私が守りたいって思ったし、サフィアと色んな話が出来る様になったからな。】
ユリファは本当に嬉しそうに話してくれた。
【でも共有してる時は入れ替わってるから、隠すのとか大変なんじゃない?どうしてるの?】
【それは…】
ユリファが答えようとした時…
【おい、奴らが家から出てきたぞ】
【亜弥登、この続きはまた今度だ】
【そうだね。星崎さん、大丈夫かなぁ。】
僕は窓越しに家の中を覗いてみた。
よかった。大丈夫そうだ。って、…あれ?ウチの窓って、外から見えない様になってるはずなのに、
【家の中、見えてる】
【何を言ってるんだ、最初から丸見えだ】
オルラルドからしたらウチの窓って、意味ないんだな。
【2人共、奴らが車に乗ったぞ。見失うなよ】
ユリファがそう言うと、とんでもない身体能力で車の後を追った。
その直ぐ後ろをリツ。僕も2人の後を頑張って付いていった。
なるべく見つからない距離で、他の人達にも気付かれない様に色んな陰に隠れながら後を追いかけた。
かなり長い距離を走り、ようやく車が止まった。中にいた人達が降りて、大きな建物に入っていく。
【あの建物に入っていくな】
ユリファが警戒している。
また暫くしてから、今度は動物保護協会の副会長も一緒に建物から出てきた。
【副会長さんだ】
【副会長?ん、なんとなく亜弥登の記憶で見た様な。】
【あの人がどうかしたのか?】
ユリファが聞いてきた。
【動物保護協会の副会長さんだよ。でも副会長さんがなんであの人達と一緒なんだろう?会長さんはいないみたいだ】
【なんか怪しいな】
【また車に乗ったぞ。追いかけよう。】
リツがそう言って、僕達は、副会長達の後を追った。
暫く後を追いかけると、今度は港にやって来た。
そして船に乗った。
【ねぇ、船に乗っちゃったけど、どうやって追いかけるの?】
【泳ぐぞ。】
えっ、正気か?
【大丈夫だ。オルラルドは泳ぐのも得意だから。】
ユリファは顔色ひとつ変えずにさっさと海に飛び込んだ。
【亜弥登、オレ達はオルラルドだぞ。心配するな。】
そう言いながらリツも飛び込んだ。
【ちょっ、待ってよぉ。】
僕も2人の後を追って海に飛び込んだ。
いくらオルラルドだからって、無理だろ。
と思っていたが、そんな心配は無用だった。
【オルラルドって、凄いんだね。僕達、鰓呼吸出来ないよね?それとも魚なのかな。】
まるで自分が魚になった様に、海と一体化している様な感じ。
【おい、あんまり長く潜るなよ。鰓呼吸じゃないんだから。】
リツがそう言った瞬間、息が苦しくなってきた。
プハァッ。
危ない、危ない。
何時間泳いだのだろうか。
分からないくらい泳いでいるのに、この身体の体力って凄い。
最初は慣れない身体で凄く疲れたけど、今は大分慣れてきたからなのか、オルラルドの身体が凄いのか、まだ泳いでいられる。
暫く泳いでいると陸が見えてきた。そして船はそこに止まった。
【僕達もあの海岸に上陸しよう。】
船に気づかれない様に海岸にたどり着いた僕達は、とりあえず思念伝達を使って話しかけてみることにした。