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伝説の動物オルラルド  作者: 由梨花
4/8

ユリファとの出会い

 僕の家は、山の上にある動物病院だ。

 動物園も近くにあるので、道は比較的整備されている。

 専用駐車場もあるし、山の上にあるので殆どの人は車で来ることが多い。

 でも僕が学校に行く時は別の道を通る。

 そこは、あまり整備されてはいないが、ちゃんと道になっていて僕専用のルートだ。

 ちょうど車一台分くらいの幅で、基本、車が通らないからそんなに危なくないし、犬の散歩コースにもしている。

 動物病院の入り口の裏側に家の玄関があり、その道は玄関から一本道でつながっているんだ。

 そんで、家は3階建で、建物の半分が病院、もう半分が僕の家だ。

 病院の2階と3階は主に入院した動物達や、保護した動物達を預かる所。

 またオペ室もある。

 2階と3階にはそれぞれ病院と家が行き来できる扉が一つずつあるけど、その扉は鍵が掛けられている。

 病院の1階は受付と待合室、あと診察室もある。

 受付の奥に休憩室が2部屋あり、手前が従業員用で、その奥が父さんと母さん用になっている。

 奥の休憩室にも鍵が付いていて、その奥の扉が家と繋がっている。


 病院と家は鍵の付いた扉で仕切られてはいるが、繋がっている為、父さんや母さん、また、出入りが必要な者しか鍵は持たせてもらえない。

 僕はまだ子供なので扉の鍵は渡されていない。

 だから僕が入れるのは父さん達の休憩室までだ。


 家の中は、1階は居間とキッチンやお風呂などがある。

 2階が父さんの寝室と母さんの寝室。

 空き部屋が2部屋ある。

 鍵を持ってる人はたまにこの空き部屋で休憩したりしている。

 3階は僕の部屋とここも空き部屋が2部屋ある。

 庭はとても広く、直径100mくらいはあるんじゃないかな。物凄く高い柵で囲ってあり、柵のまわりは草木で覆われているので外から中を見ることはできない。

 3階の部屋のベランダからは外の景色を見る事はできるが、両親にオルラルドは出さないように言われていて、窓はロックされている。

 窓ガラスも元々外から見えないガラスになっている。

動物園や病院に来た人が覗かない為らしい。

 それに玄関は病院の入り口の反対側にある為、患者さん(動物)のご家族(飼主さん)と鉢合わせもしない。

 だからオルラルドがいても外の人に気づかれることはない。

 それにリツとリフは、僕の専用ルートで見つけたので、治療した何人かの人間しかオルラルドの存在は知らない。

 そして鍵を持っているのもその人達だけだ。


 因みに鍵を持っている人は、僕が知っている限り


 星崎 奏(ほしざき かなで)さん(動物カウンセラー)

 綺麗で髪が短い女性 母さんの高校の同級生だ。


 才川 時(さいかわ とき)さん(動物看護師)

 男性で昔働いてた動物病院で父さん達と一緒だった。


 早瀬 紫乃(はやせ しの)さん(身の回りのお世話)

 お母さんのお母さんで、僕の祖母。

 両親が忙しい時に家の手伝いで来てくれる。

 動物看護師の資格も持っている。


 この三人は、リフとリツが初めて家に来た時からお世話をしてくれていて、両親が信頼している人達なので、オルラルドの事を誰かに話すはずがない。


 僕達は動物保護協会の会長が何か知っているんじゃないかと睨んでいる。

 リツが学校に行っている間、僕は3階にある自分の部屋の窓から外を眺めながら、どうやって会長を調べるか考えていた。




 すると…


【オルラルドが近くにいるのか?】


 知らない誰かが思念伝達を使って話かけてきた。


【もしかして、そこにいるのはフィルスなのか?】


 フィルス?一体誰の事なのだろう?


【違う。フィルスの息子だ。】


 学校に行っているリツにも聴こえていたようで、リツが返事をした。

 それから続けてリツが言った。


【お前は誰だ?人間だな。なぜ思念を使えるんだ?それになぜその名を知っている?】

【私はユリファ。確かに人間だ。そしてフィルスは友だ。】

【…ユリファ…か。】


 リツが復唱した。

 聞き覚えのある名前だ。

 リツの記憶にあるのかも知れない。


【もしかして君は、あの時フィルスと一緒にいた…】

【ねぇ、どういう事?2人は知り合いなの?】


 僕は思わず口を挟んでしまった。

 ユリファは僕に向かって言った。


【君も人間だな?】

【うん、そうだけど。】

【そうか!君たちは共有してるのか!それは心強い!】

【どう言うこと?】

 僕はユリファに尋ねた。

【君、教えてないのか?】


 と、ユリファはリツ向かって言った。


【えっ、なんの事だ?】


 リツもよく分かっていないようだった。


【フィルスに聞いてないのか?フィルスはどこにいる?】

【…ママは…死んだよ。】


 リツは苦しそうに答えた。


【フィルスが死んだ?どう言う事だ。】


 それからリツは今までの経緯をユリファに話した。


【そんな事があったのか。】


 ユリファは悔しそうに言った。

 そして


【早く他のオルラルド達を助けないとな。】


 ユリファは力強く言った。


【ユリファと言ったな。ユリファはなぜココにいるんだ。】


 リツが質問した。


【私は仲間と一緒にオルラルドを助けにきたんだ。だか、その仲間と逸れてしまって。】

【仲間がいるの?】

【あぁ、君は…?】

【僕は亜弥登。このオルラルドはリツだ。君がフィルスと言ったオルラルドを僕達はリフと呼んでたんだ。】

【私の事はユリファと呼んでくれ。 リフか。良い名前だな。亜弥登達に大事にされたんだな。ありがとう。】


 お礼を言われて僕はちょっと泣きそうになった。

 それからユリファは、なぜ、ここにいるのか、仲間の事などを教えてくれた。




【私はイーエデンで暮らしてたんだ。亜弥登は、オルラルドが昔、人間と共に暮らしていた事を知っているか?】

【あ、うん。僕が子供の頃に好きだった本に書いてあった。そのお話では、悪い貴族の人間がオルラルドの毛皮や瞳の宝石を作る為にハンターに襲わせたって。でも、オルラルドを愛する若者がオルラルドと共に戦って、オルラルドは自由になったんだって。】

【そうだ。】

【それって、お伽話じゃないの?】

【いいや、事実だ。自由になったオルラルド達は、イーエデンと言う島で平和に暮らしていた。人間達が入れない様に入り口の扉に鍵を掛け、島自体を隠したんだ。そこにはかつて一緒に戦った若者達も暮らしていた。私はその者の子孫なんだ。】

【子孫⁉︎】

【あぁ、そうだ。だからフィルスの事も知っているんだ。】


 するとリツが言った。


【ママから話は聞いた事がある。一緒に暮らしていた人間がいること。】

【そうか、しかし、外の人間はイーエデンにやってきた。イーエデンの場所も扉を開ける方法も、オルラルドか、イーエデンに住む仲間の人間しか分からないはずなのに。だが、外の人間達は、オルラルドを全て捉えて何処かへ連れ去ったんだ。そして私達イーエデンの住人達は捕まってしまった。しかし、オルラルドと共有している私達は、囚われているオルラルド達を助ける為に、力を使ってなんとか脱出し、ここまで逃げてきたんだが、途中仲間と逸れてしまった。だけど、オルラルドの気配を感じた私は、ここに辿り着いたんだ。そして君たちを見つけた。】

【そうだったのか。】


 リツが答えた。


【仲間も全員逃げられたかわからない。思念伝達も離れすぎると使えないんだ。それに他の住民達は捕まったままなんだ。早く助けないと。】

【力って何?】


 僕はユリファに尋ねた。


【君たちはフィルスから聞いてなかったんだな。オルラルドと絆で結ばれている人間は、一時的に入れ替わる事によって、お互いの全てを共有する事が出来るんだ。運動能力は人間もオルラルドと同じようになるし、オルラルドの高い知能も共有できる。そしてそれによってオルラルドは人間の言葉も話せる様になるんだ。また、オルラルド自身も更に強い力を持つと言われているが、こればかりは私には分からん。過去にそんなオルラルドがいたみたいだが、どうしてそんな力を手に入れられたのか、分からないんだ。まぁ、しかし、入れ替わるきっかけは、強い絆が生まれた時。そして元に戻るきっかけは、お互いを理解し信頼し合えた時。2人の気持ちが同じくらい大きくならないと、元に戻る事は出来ない。】

【じゃあ、ユリファも共有したオルラルドがいるって事だよね?】

【あぁ、「サフィア」と言うオルラルドだ。しかし、彼女も人間達に連れ去られてしまった。早く会いたい。】

【そうだったんだね。】


 ユリファは悲しそうな声で言った。


【もし、何かわかった事があれば教えてくれないか?私もこの辺りを偵察して何か分かったら思念伝達で声をかける。】

【あぁ、わかった。】


リツがそう言うと、ユリファは何処かへ行ってしまった。






 それから何日か経ったある日、ユリファから連絡がきた。


【オルラルドの匂いがする。あの男、怪しいな。亜弥登の家の方に向かったぞ。】


 その日は学校が休みでリツも家にいた。

 僕達は、ユリファの言葉を聞いて、警戒していた。


 丁度その日は星崎さんが家に来ていた。

 僕達の様子を見に来てくれたみたいだ。




 〔ピンポーン〕


 チャイムが鳴ったので、星崎さんがインターフォンに出た。


「はい、どちら様ですか?」


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