伝説の動物との出会い
車に轢かれそうになった僕をかばって、僕とリツは―。
「おはよー、あやとぉ!相変わらず獣臭くっせ!!ちゃんと風呂入れよぉ(笑)」
「ぅるさいなぁ。入ってるっつーの。」
学校ではいつもこの獣臭のせいで揶揄われる。
僕の名前は「徳永 亜弥登」中学1年生。
僕の父 徳永尋と、母 柊は獣医で、この白羽島にある白羽山と言う山の上に大きな動物病院を営んでいる。
動物保護もしており、里親の募集なんかもしていて、いろんな種類の動物達がこの白羽山にはいる。
動物病院の近くには動物園もある。
そしてその近くには寮も完備されており、動物看護師や飼育員さんたちはその寮に住んでいる。
そう、僕は朝から晩まで動物達と生活しているのだ。
そりゃあ獣臭くもなるだろう。
それに生まれた時から動物たちと暮らしているせいか、動物の気持ちが他の人よりわかるらしい。
それは僕の両親含め、飼育員さんやカウンセラーの人でもわからないようなちょっとした動物の仕草や表情、鳴き声が、僕にとってはいつもと全然違って見えて、いろんな病気を早期発見できる為、みんなが褒めてくれる。
えっへん<(`^´)>!!
そんなある日、学校から家へ帰る途中の山道で、傷だらけの動物に出会った。
その動物は大型犬よりも一回りくらい大きくて、まるでオーロラの様に輝く毛並みやキラキラとエメラルドグリーンに輝く大きな瞳。
思わず見惚れてしまう程に美しかった。
僕が近づくと、ものすごく警戒していたけど、暫くすると力尽きたのか気絶してしまった。
それから僕が近づいても全然起きない。
すると綺麗なその動物の後ろから同じくオーロラ色の小さな動物が現れた。
小さい方は元気そうだ。
親子だろうか。
幸い家も近かったので僕は急いで両親を呼びに行った。
「ひとまずこれで安心だが、暫く様子をみよう」
母親と見られる動物の手当てを終えた父さんがそう言うと、僕から少し離れたところで母さんと何やら話し込んでしまった。
深刻なのだろうか。
しかし小さい方はよほどお腹が空いていたのか、勢いよくミルクを飲んで、ぐっすり眠っている。
僕は子供の動物の寝顔を見ながら微笑んだ。
すると先ほどまで話し込んでいた父さんと母さんが僕の側にやってきた。
「亜弥登、あの動物のことなんだが…」
「もしかして…オルラルド?」
「あぁ。多分そうだろう。いや、間違いない。オルラルドだ」
「うゎーあのオルラルド⁉︎凄い!」
オルラルドは伝説の動物だ。
人前になんて現れるはずがない。
単なるお伽話だと思っていたけど、まさか実物に会えるなんて、思わず僕は驚いてしまった。
しかし、父さんは難しい顔をしている。
「なぜ、あんな所にオルラルドがいたんだ。やはりあの話は本当だったのか」
と、父さんが何やら呟いている。
「あのオルラルドは、逃げてきたのかしら?」
母さんがそう言った。
逃げてきた?一体何から逃げてきたのだろうか?
僕にはよくわからなかった。
そして父さんと母さんは僕に
「このことは絶対に誰にも言ってはいけないよ。お友達にも言ってはダメだからね」
「そうよ。絶対に秘密よ」
そう言ってまた他の動物の診察に戻った。
オルラルド親子は、動物病院ではなく、家で面倒を見る事になった。
だから僕は、毎日学校が終わると真っ先に家に帰り、オルラルド親子の様子を見に行った。
大き目のゲージに入れられたオルラルド親子を僕は少し離れた所から眺めていた。
普通なら、最初の内は、あまり側に寄ると母親が警戒して子供に何をするか分からないからだ。
うちの動物病院では元々動物保護も行なっていて、オルラルド母と同じ様な動物達は沢山みてきた。
僕は動物の気持ちがわかる方らしいので、動物カウンセラーの人達と一緒に動物達のケアもたまに行っていた。
だから、本当に辛い目に遭わされていたのは一目瞭然である。
「なんて可哀想なんだ。こんな事絶対に許されない」
僕達は必死に治療した。
早く元気になって欲しい。
そんな想いが伝わったのか、徐々にだか僕に慣れてきた。
最近ではゲージ生活も少しずつ少なくなり、子オルラルドと遊んでも警戒されなくなった。
むしろ子オルラルドと戯れあっている姿をみて安心している様にもみえた。
あれから3ヶ月。
「リツー!おいでー!」
僕は子オルラルドに「リツ」(推定生後6ヶ月)
母オルラルドには「リフ」と名付け(推定年齢不明)今ではリツと毎日庭で走り回って遊んでいた。
リフもリハビリが順調で、早く走るのはまだ難しいが、普通の生活には支障はない。
まだ警戒心は強いが、僕には心を許しているようだった。
しかし、父さん達が言うには、あまり永くはないかもしれないと。
オルラルドは、ネコの様な風貌から、ライオン、トラ、チーター、豹など全てのネコ科の血を受け継いでいると言われていて、ネコ科のご先祖様とか、神の使いとか諸説ある。
知能が高く、狩の腕前もすごいとか。
それに不思議な力があるとも言われていて、未だ正体はよく分かっていない。
そもそもオルラルドが人間の前に姿を現すと言った話を殆ど聞いた事がないのだ。
しかし、父さんの話によると、リフには沢山の傷痕があり、手術の様な痕などもあった。
もしかすると虐待を受けていたのではないかと。
致命傷なのは、銃で撃たれた傷。
その為、保ってあと半年。
この話を聞いた僕は、最期の瞬間まで愛情を注ぐと決めた。
半年以上の月日が流れた―。
リツは物凄く人懐っこい性格で、リフが亡くなってからというもの、僕の側から離れなくなり、学校へ行くにも一苦労になった。
「もう、母さんリツを抑えておいてよぉ!僕学校遅刻しちゃう!」
「よいしょ。亜弥登、母さんにはもうリツは持ち上げられないよ」
父さんは笑いながらリツを持ち上げて僕から引き剥がしてくれた。
父さんの腰痛が悪化しませんように。
なぜならあの小さかったリツも今じゃ大型犬くらいの大きさがあるからだ。
僕はそう心の中で呟きながら父さんからリツが逃げないうちに学校へと向かった。
「毎朝毎朝リツも懲りないなぁ」
尋がコーヒーを飲みながら椅子に腰かけたその時だった。
「あれ?リツはどこかしら?」
柊がリツを探し始めた。
「え、いないのか?いつの間に!」
「もしかして…!」
僕の名前は徳永亜弥登。
中学2年生だ。
毎日通るこの学校へと続く道。
僕はいつもの様に歩いていた。しかし、今日はいつもと違ったんだ。
だっていつもなら、こんな山道に車なんか通らない。
しかもあんなに速いスピードで。
その車はどんどん僕に向かって近づいてきた。
よけられない…
死ぬのかも…
そう思った瞬間、横から何かぶつかってきて、僕を突き飛ばした。
僕は死んだのだろうか。
ゆっくり目を開けると、目の前にはリフが立ってた。
「リフ!!会いたかったよぉ!!」
僕はリフに抱きついた。
「私はいつも側にいましたよ」
えっ、リフが喋った。
僕はびっくりしてリフの顔を見た。
リフは微笑んでいた。
そしてまた、ゆっくりとリフは話し始めた。
「ここは亜弥登様の意識の中です。私はあなたに助けてほしいのです。」
「えっ、どうゆうこと?」
「説明すると長くなってしまいますので、私の生前の記憶をあなたと共有します。リツにはすでに伝えてありますのでよろしくお願いしますね。私はいつでも二人を見守っていますよ。」
そう言うと、いきなり別の光景が飛び込んできた。
これは、リフの記憶なのか?
わぁ!なんて綺麗な景色なんだろう。
自然豊かで、まるで天国みたいだ。
そこには沢山のオルラルドがいた。
みんな自由に暮らしてる。
すると怖そうな人間達が次々にオルラルドに襲いかかった。
そしてオルラルド達を何処かへ運んでいる。
な、なんなんだ?
また景色は変わり、汚い小屋のようなところに更にオルラルドが一匹…二匹…いや、たくさんいるぞ。
なんだここは…。
オルラルドはみんな鎖に繋がれている。
「「バチン!!」」
!?
今叩かれたのか?
さっきオルラルドに襲い掛かった人間たちと同じような服を着た人達が、鞭のようなものを持ってオルラルド達を叩いてりるのか。
オルラルドはみんな傷だらけだ。
酷い。
白衣を着てる人もいるな。
注射器?
なんだこの光景は…!!
あれ、また景色が変わったぞ。
リツだ!こんな近くに。
咥えているのか?
この光景はリフ目線の光景なのか?
もしかして今までの光景も?
リツを咥えて走っているんだ。
血が地面に垂れている。
リフの血なのか?
更にまた景色が変わった。
ここは見たことがある場所だ。
初めてリフとリツに出会った場所。
遠くに人影が見える。
あ、僕だ!
そこで映像は途切れた。
今のは何だったんだろう。
はっ!
僕は目を覚ました。
体中がじわじわと痛くなってきた。
いたたたたっ。
どうやら夢を見ていたのか。
辺りを見回した。
父さんと母さんがいる。
ここは僕の部屋だ。
ベットに眠っているのは……僕?
どういうことだ?
じゃ、ここにいる僕は誰なんだ。
僕は体を見た。
モフモフ…??なんだこれ!
鏡がないかと辺りを見回すと、ちょうど窓があった。
僕は窓ガラスに薄ら写っている自分の姿をみて驚いた。
えっ、リツーーー!!
僕がリツになってるぅぅぅぅ!!!???