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どうしても異世界転移したくて研究しまくってたら知りすぎてしまって世界を追放されました ~俺は異世界で楽しく過ごすことにします~

作者: あとりえむ

 俺は異世界に行きたかった。

 物語で聞くような、見目麗しくも逞しい勇者が邪悪な魔王を倒す、そんな世界に。

 生まれ変わりではなく、自分のこの身で、この自己認識で行きたかった。


 幼いころは、この夢をみんな楽しそうに聞いてくれた。でも、それは本当に数年だった。

 少し成長してからは夢ばかり見ている愚か者として見られるようになった。




 俺は諦めなかった。

 金を貯めるために就職した。異世界へ行く準備として体を鍛えていたから、肉体労働なら仕事先には困らなかった。


 夢を話すと馬鹿にされるのは変わらなかったし、いじめらることもよくあったけど、異世界へ行くためと思って我慢した。


 十分な金額が手に残ったころ、金にものをいわせて高等教育機関に入った。入学前の空白期間のせいで、周囲と年齢の合わない俺は浮いていた。それでもかまいやしなかった。


 金を貯めてから教育機関へ入るというサイクルを繰り返し、俺はいろいろなことを知った。


 重力。

 光。

 人体について。


 他にも学んだことは数え切れない。物の(ことわり)は特に重点的にやった。

 知らないことが知っていることになるのは楽しかったな。いや、それは今でも楽しいか。




 知識が満ちたと思えるまでは時間がかかった。だけど人生はまだ残りがあった。俺は本当は頭の出来が良かったのかもしれない。


 俺は教育機関ではない場所へ学びに出ることを決めた。

 文化圏、宗教、秘密結社、その他。各団体に伝わる秘術や秘技を学ぶためだ。

 それを話すと、学業で優秀な成績を修めていた俺は教員に引き留められた。


「あんなものは迷信だ。素晴らしい頭脳を持っている君なら分かるだろう? 残って研究したほうが将来のためになる」


 皆そんなようなことを言った。


 くそくらえだ。

 俺は異世界へ行く準備としてやっていたのだ。

 自分の知識が不完全なのは知っているが、完全な知識など存在しないではないか。

 それならば俺は準備を続けるため、次の段階へ進むだけだ。


 そう伝えると、悲しそうな目をされたものだ。

「いつか君が現実を見てくれることを願うよ」と。




 秘術を学ぶ旅は困難の連続だった。排他的な集団は当たり前だったし、金で転ばない者も多かった。

 それでも俺は硬軟織り交ぜた交渉で入り込み、知識を得ていった。

 教員たちの言うとおり、迷信や妄想も多かったが、得られたものは大きかった。


 しかし人生は短い。

 残り時間は厳しかった。


 俺は世界各地に伝わる、若返りの泉を訪ねることにした。


 結論を言うと、どの泉の水も若返りの力を秘めていた!


 誰に聞いても単なる言い伝えだという答えが返ってくるが、それは使い方を知らないだけだ。

 あれらの水は特殊な秘技を用いることで、本当に若返りの水になるのだ。

 頭の凝り固まった教員どもには一生たどりつけない領域だ!




 若返りがバレると面倒なので、俺は人里離れた土地で研究を続けることにした。

 何度も若返りの水を使い、ときには新しい知識を得るために教育機関へ入り直し、また個人の研究に戻る。


 そして数々の秘術を身につけた果て――とうとう発見した。


 世界の壁を越える魔法が存在したのだ!




 俺は長い時間をかけて自分の知識を確認し、実験ではなく本番の魔法を発動した。

 目の前に次元の裂け目が生まれ、その先には深い闇が広がっていた。


 そして声を聞いた。


 ――イセ・カイ、あなたは世界秩序を逸脱してしまいました。あなたをこの世界から追放します。


 何を今更。

 言うなら発見したときに言っておけ。

 そもそも何者だ。


 そう思った瞬間には、俺は転移していた。




 そこは恒星に近い灼熱の惑星だった。

 だが世界秩序を超越した魔法を持つ俺には何の問題もなかった。


 創造魔法によって生きていける空気を生成し、変換魔法で呼気と吸気を調整。圧力操作術と重力子操作術で周囲の環境を最適化。各種技術を結集したシールドを創造し、目に見えない有害な何かを遮断。


 本来これらは次元の裂け目へ入る前にやっておくつもりだった。

 順番が逆になったが、しかたがない。


 俺は自前の次元魔法で次の世界へ進んだ。




 星の数ほどの世界へ飛び続けて、生き物がいる世界を探した。


 若返りの水がなくなりそうになったころだった。

 ついに人間のいる世界を見つけた!

 空気も、重力も、病気も、何もかも大丈夫な世界!


 かつて使っていた年という単位が意味をなさなくなった世界で、俺は涙を流した。


 点滅する赤いランプを乗せた鉄の荷車の中、異世界人たちは言葉の通じない俺の話を聞こうとしてくれた。


 こんな親切な人々のいる異世界で、俺は新しい人生を始める。

 なんて素晴らしいことだろう。

 初めて神を信じたくなった。



どこかでネタかぶりしてたらごめんなさい。


興味深かった、面白かったなどありましたら、評価やブックマークをしていただけますと幸いです。

ご感想も歓迎です。


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