梅と雀と女の子
梅花心易創始者である宋の邵雍(1011~1077)にまつわる梅花心易、はじまりのエピソードを焼き直しました。邵雍は占術家の間では梅花心易のほかに万年単位で世界の行く末を占う事が出来る「皇極経世書」が有名ですが、詩集「伊川撃壌集」を残している詩人でもあります。私も漢詩を書く様になったので、両面から彼の後を追いかける事が出来る様になりました。
【梅と雀と女の子】
今は昔の中国で、とある易者の先生が家人集めて仰った。
「庭の梅の木見ていたら、枝にとまったスズメ二羽、
争いはじめてもつれ合い、一緒に地面に落ちよった。
これを占機に卦を立ててみると、本日昼下がり、
幼い少女がやってきて小枝を折ろうとするはずだ。
その際、何かに驚いて怪我してしまう事になる。
大事に至る事は無い。とはいえ出来れば傷つけず
済むなら済ませてやりたいと、私も思った次第でね。
皆には面倒をかけるが、娘が来ても気に留めず
気の済む様にさせてくれ。驚かしてはいけないよ。
梅の小枝の一本で済むなら安い物じゃないか」
「かしこまりました」 家人一同頷いた。
果たしてその日の昼下がり、やってきたのが女の子。
きれいな花を身に纏う梅の小枝に注目し、
思わず近寄り手を伸ばす。
「きれいな梅でしょう」 一人の家人が声をかけ、
「きゃっ!!」
少女は驚き転びかけ、梅の木に触れ怪我をした。
この家人。遣いに出ていて先生の話を聞いていなかった。
少女の怪我は大事には至る事なく済んだとか。
これぞ巷で有名な梅花心易の逸話。