29.魔女と刺客
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「おかえりなさいませ、ご主人様」
聖剣を取り戻し、屋敷に戻ったレイドールをネイミリアがとろけるような笑顔で出迎えた。
砂糖菓子のように甘ったるくも美しい表情は異性はもちろん、同性さえも夢に見るほど虜にするだろう。
「ああ」
そんな笑顔を向けられたにもかかわらず、レイドールの反応は淡白である。
すげなく返事しながらも視線は床に転がっている『もの』へと向けられており、怪訝そうに眉根を寄せる。
「なんだ、それは。どっから拾ってきた?」
「拾ってきたなんてまさか! 勝手に家に入ってきたので、とりあえず駆除しておいただけですよ!」
パタパタと両手を振るネイミリアの足元には、5人の男性が横たわっている。
貴族達が住まうこの区画では見かけることがないであろうボロキレのような服を着た男達は、いずれも白目を剥いて口から泡を吹き昏倒している。
「それで? こいつらはどこのどいつだ」
「拷問……もとい尋問をしたところによりますと、どうやらこの国の貴族に雇われた刺客のようですね」
「刺客……おいおい、さっそく俺の命を狙ってきやがったか?」
王の御前であれほど暴れて見せたのだ。命を狙われたとしてもおかしくはない。
国王の息がかかった貴族が、王の敵を討つために暗殺者を送り込んできたのだろうか。
(それにしても、動きが早すぎるな。グラナードの部下が動くにしても、てっきり俺がかけた呪いの分析が終わってからになると思っていたんだが……)
レイドールがグラナードにかけた呪いは、グラナードがレイドールとの約定に背く行為をとることで発動する。その最たるものはレイドールに危害を加えることである。
呪いを解除するよりも先に襲ってくるなど、いくらなんでも気が早すぎはしないだろうか?
「いえいえ、この方たちは私が目的だったようですね」
「お前が……?」
「はい、私のことを生け捕りにして、どこかに連れていくつもりだったようですよ?」
ネイミリアの言葉にレイドールはしばし考えこみ、やがて一つの結論に達して指をパチリと鳴らした。
「そうか、人質か!」
レイドールは聖剣に選ばれた勇者であり、この国の命運を握っているといってもいいジョーカーだ。その力を欲する者はこの国にいくらでもいるだろう。
彼らの雇い主である貴族が王の息がかかった者か、そうでない者かは判然としない。
どちらにしても、レイドールに対する交渉のカードとしてネイミリアの身柄を抑えようとしたに違いない。
「なるほどな、それは盲点だった」
別にネイミリアのことを忘れていたわけではない。
しかし、レイドールにとってネイミリアとは守るべき存在というわけではなく、ゆえに人質に取られるという発想自体がなかったのだ。
そもそも、ネイミリアの正体は『破滅の六魔女』と呼ばれた世界を滅ぼしかけた魔人である。数百年にわたる封印によって力の大部分は失っているものの、その力は常人の及ぶものではない。
聖剣の加護を受けているレイドールでさえ、ダーインスレイヴの力がなければとうてい勝てない相手なのだから。
「なるほどな……これからは屋敷に警備の人間を置いたほうがよさそうだ。できれば開拓都市の冒険者に来てもらいたいんだが……」
開拓都市レイドの冒険者は、レイドールにとってともに同じ釜の飯を食った信頼のおける戦友。王都を守っている小綺麗な騎士などより遥かに頼もしい者達である。
しかし、彼らは南方の密林からの魔物の流入を防ぐ役割を持っており、開拓都市を容易に離れることはできないだろう。
開拓都市の最高戦力であったレイドールが町を離れている現状となれば、なおさらである。
(帝国との戦いが終われば、次は兄貴と……グラナードと対決しなければならない。せめて使える手足がもう二、三本欲しいところだが……)
とはいったものの、ここはグラナードのお膝元。レイドールに味方をする者は多くはないだろう。
表向き味方をする者はいたとしても、グラナードや貴族の息がかかっていないとも限らない。
(可能性があるとすれば、今回の帝国との戦いだな。ここで俺が目に見えた結果を出せば、グラナードを裏切って俺につく人間だって現れるはずだ)
そのためには、圧倒的な結果を残さなければならない。
勝利をすることは絶対条件であるが、それ以上の圧勝が必要となる。
将軍であるダレン・ガルストや他の王国軍の兵士の頭を抜くような手柄を立てなければならない。
(そのために抑えるべき首は一つ……敵の聖剣保持者を落とす!)
「それはそうと、レイドール様。お風呂とご飯、どちらにいたしましょう? それともやっぱり私ですか? 私ですよね!?」
「兄貴の手の者がいつ襲ってくるかわからないからな。しばらく夜伽はいらん」
「ええええええええええっ!?」
予想以上に愕然とした叫びが返ってきた。
レイドールはあまりの声量に両耳を抑えて、大きく身体をのけぞらせた。
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