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243.自称嫁の主張

 アルクスを含めた『妖精戦団』がアテルナ王国まで駆けつけた目的は、ザイン王国に恩を売って、旧・アテルナの領地を亜人との混血の移住先として確保すること。

 その予想は正鵠を射ていたのだろう。アルクスが幼い顔立ちに満面の笑みを浮かべて両手を合わせる。


「然り! その通りだ、レイドール殿下!」


 アルクスがはしゃいだ子供のようにパチパチと拍手をしながら、レイドールを称賛する。


「夫となる者が聡明なのはとても好ましいことだ! レイドール殿下が仰る通り、我らの目的は貴殿に恩を売ることだ。アンデッド討伐に協力することと引き換えにして、我が国の混血が暮らすための土地を得ることである!」


 アルクスは隠すでもなく、平らな胸を張って傲然と言い放つ。


「アテルナ王国はアンデッドによって人口の大多数が失われており、無主の更地となっている土地も多いと聞く。国力回復のためには他国から移民を募るしかないだろう。帝国に居場所がない我ら混血にとってはとても都合が良い!」


「……だろうな。実際、こっちにとっても都合が良いよ。わざわざ腐った死体がうろついている土地に引っ越してきてくれる酔狂な移民は少ないだろうからな」


 たとえ困窮していたとしても、つい先日まで魔女と不死者の支配下にあった土地に移り住みたいとは誰も思わないだろう。

 それこそ、よほどの差別や迫害でも受けていなければ。


「その差別や迫害を我ら混血は受けているのだ。場合によっては、純粋な亜人よりも扱いが酷い。新天地に旅立ちたいと思うものは少なくないだろうな」


「ちなみに、移民希望者はどれくらいいるんだ?」


「これから募集をかけるので正確な実数はわからぬ。しかし、帝国にいる混血はエルフ混じりが五千。獣人混じりが二万。ドワーフや翼人などの他の混血が合わせて三万ほど。全員が移住を受け入れるということはないだろうが、半数以上は来てくれるだろうな」


 つまり、三万近い移民が帝国から移住してくるということである。

 人口が低下したアテルナ王国には有り難い話だ。たとえそれが亜人との混血であったとしても。


「この国はそこまで亜人差別が強くもないからな……状況が状況だし、混血の移住に文句をいう奴は少ないだろう」


 亜人差別は大陸中央の覇者であるアルスライン帝国で特に強く、帝国から離れるほどに緩和される傾向がある。

 ザイン王国やアテルナ王国は差別が緩く、そこまで大きな問題にはならないはず。


「こっちは良いんだが……帝国側は問題ないのか? 自分達の国民が移住することに皇帝は納得しているのか?」


「公に頷いてはいないが『黙認』というところだろうか。皇帝という立場からは他国に自国民が移り住むのは好ましくないが、国内で差別による対立が生じているのも好ましくはない。混血が他国と内通して兵士やスパイを手引きしたという事件もあったようだからな。我ら混血がいなくなったとしても、内心では喜ぶであろうな」


「そういうことなら結構なことだ。詳細は後で詰めるとして……俺から反対はない。ネフェルテも受け入れるだろう」


「ウムウム、ならば決定……とはゆかぬが、本国に良い話を持ち帰ることができるな! 冷遇されている混血の者達も喜ぶであろう!」


 アルクスが満足げに頷いた。

 これで移民による労働力の確保ができた。

 もちろん、他国の人間が大勢入ってくるとなれば軋轢は避けられないだろうが、アンデッドに支配されていた頃よりも悪くなることは有り得ない。

 ザイン王国に併合されて、アテルナ王国は良い方向へと向かっていくはずだ。


「ところで……話は変わるが、私の輿入れはいつにしようか?」


「あ?」


「私とて女だ。結婚する際にはそれなりに着飾りたいと思っているし、子供も最低十人は欲しい。そちらも妾や側室はいるだろうから挨拶もしておきたいのだが」


「…………」


 当然のように語るアルクスにレイドールは言葉を失った。

 一つの問題が解決したと思ったら、別の問題が浮上してきてしまったようである。


 レイドールは目の前の幼女にしか見えない女を切り抜ける方法を思案して、頭を悩ませるのであった。


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