私とモンスターと吸血鬼
「人の渾身のチョイスをよくも馬鹿にしてくれたわね」
私は棺に倒れ込んでいる青年を仁王立ちで見下ろすと、額にめり込んでいるヒールを抜いてやる。
その時、私は初めて彼の顔を真っ直ぐに見つめてみた。
透き通る様な白い肌、端正で精悍な顔の造り――彼が吸血鬼でなかったら、恐らく私はその場で土下座をしながら告白していただろう。
しかし、彼の異様に鋭い爪とやや尖った耳が、彼が私達と同じ人間ではないことを如実に物語っている。
ちなみに、尖った耳を何度かつんつんしてみたが、触る度にぴくぴくと動く辺り、やはり特殊メイク等ではなく本物の耳らしい。
それにしても。
(本物の吸血鬼かぁ。映画や本じゃ、吸血鬼は絶対イケメンだって言われてるけど……まさか、本当にここまでとはね)
彼の白皙の美貌に、私は魅入られた様に彼の顔を見つめ続ける。
しかし、この時の私はまだ気付いていなかった。
異変が、直ぐ傍まで迫っていたことに。
「ま、イケメンでもあれよ。人が全力で選んだプレゼントを馬鹿にしたらバチが当たるんだから。 反省しなさい」
私は彼の顔面から回収したヒールを履くと、その場から立ち去ろうとする。
が、そんな私の前に、複数の人影が立ち塞がった。