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私のペットな吸血鬼  作者: 埜吹陸斗
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聖夜前日の贈り物⑥

 だが、目の前を百貨店の店員がオリンピック選手より速いのではないのかと思う程の速度で避難していった。


 それを目の当たりにし、これはサプライズでもなければイベントでもないのだと余計に思い知らされる結果となった。


(……そうよね。 まぁ、イベントだとしても、棺桶の中に入ったまま上空から落下して生きてる人間なんていないわよね 。ってことは、やっぱり吸血鬼~?!)


「い~や~!!」


 遂に恐怖が心の臨界点を突破し、銀座の往来のど真ん中で悲鳴を上げてしまう私。


 けれど、行き交う人々も自分達が逃げるのに必死で私に見向きなんてしてくれない。


 と、遂に棺の中の人物がその上半身を起こすと、ゆっくりその場に立ちあがり始めた。


「こっ、こっ、こっ、殺される~!!!」


 私はバッグの中から武器になりそうな物を必死に探すと――魂を込め、長時間かけてじっくり選んだクリスマスパーティー用のプレゼントを手に取る。


 本来は友達に渡す為の物だったが、緊急事態だ。仕方ない。


 私は――綺麗に包装された木彫りの熊を掴み、大きく振りかぶると、全力で棺の主に投げ付けた。


 それは綺麗な放物線を描きながら、真っ直ぐ棺の主の頭に向かって飛んでいく。


 辺りを支配する一瞬の静寂、息を呑む人々。


 そうして、雪夜に響き渡る、ボカッという鈍い音。


 すると、棺の主は長身を窮屈そうに屈め、足元に落ちている木彫りの熊を丁寧に拾い上げ……クリスマス用の包装紙と私の顔を見比べ、呟いた。


「ふむ……随分と斬新なクリスマスプレゼントだな? レディ」


 次の瞬間、私は履いていたヒールを脱ぎ捨てると、勢いよくそいつに向けて投げ付けた。


 ヒールを顔面に食らい、棺の中にぶっ倒れる青年。


 これが、私とヤツ――もとい、彼との最初で最悪の出逢いだった。


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