ひとの記憶、性格
愛紗のように、静かな田舎で生まれれば
赤ちゃんの頃から、ストレスなく
のびのびとする。
自然な環境の音、空気。
それらは、人になる前から動物に快いものであった。
外敵の存在感がない状態の環境音だからである。
人間の赤ちゃんは、また、産まれてからしばらくは目も見えない。
耳だけは聞こえるから、自然の音は大切である。
自分では動けないのだから、快い音環境は
必然である。
そうでない場合、不快環境への拒絶を
記憶してしまう。
それで、大人になっても不快な事を
探してしまう。
もう、不快になりたくないからだ。
単純な話である。
愛紗は、幸いにしてそうではないから
幼児の頃も、快い事を求めて
例えば笑顔でいると、お母さんが来てくれると
覚える。
そんな風に、お母さん、お父さんが
親しいものだ、と記憶していく。
自然に、その人達に好ましい自分で居ようと
思うようになる。
そうして、根拠なく従順になるのであるが
しかし。
恋愛や婚姻、等という
個人的な趣向まで定められるのも、少し
窮屈であるが
それは、そういうもの。
大人になって、いろいろな経験をするから
その中で趣向も変わっていくものだ。
そんな理由で、愛紗は故郷を離れて
大岡山へと出てきたのだが
愛紗自身、どうしても嫌、と言う程の
ものでもなかった。
別に、好きな人が居た訳でもない。
ただ、なんとなく
「自身で決めたい」と、思った所
仕事に就くことを反対されたから
家を離れた、と言うだけだった。
特に、運転士になりたいと思ったのは
初志ではなかったのだ。
そう、愛紗は回顧した。




