1列車、場内進行
「だけど、なんで鉄道なんだろ」
愛紗は、個室寝台8号車10番に戻って
扉の鍵を掛ける。
なんとなく安心するのは、やっぱり女の子だから。
「家に居ても、なんとなく」
父や母が、小さな子供みたいに
自分の行動を仔細に干渉するのが
嫌だったし、それはお嫁に行っても変わらないのかな、なんて
思って。
逃げるみたいに大岡山へ出てきたのは
募集が偶々、全国規模の東山だったから。
田舎に居ると、そういう事も時々ある。
でも。
東山、大岡山は安心できた。
愛紗を子供扱いしないし。
それは当たり前だけど。
いちいち監視されてるみたいな家にいるよりも
余程、良かった。
「それがなぁ」
大岡山でドライバーを志望したばっかりに
田舎に戻れ、と云われるなんて。
ちょっとがっかりした。
「でも、まあ、大分のおばさんのところなら」
親元からも離れてるし、あそこならのんびり仕事できるかな。
由布院に営業所ってあったかなぁ、なんて
愛紗は思いながら。個室寝台に揺られている。
2階は割りと揺れるんだけど、それも、なんとなく
楽しみのうち。
窓が、天井についているので
星を見ながら旅ができるし。
雨でも降れば、水滴が流れて綺麗だ。
夜、駅を通過すると
その水滴に、明かりが撥ねて
とっても綺麗だ。
今は、雨じゃないけどと
個室のブラインドカーテンを開ける。
スライド式の布カーテンで
窓に沿って湾曲している、凝ったつくり。
窓の外は、どこか、工業都市だろうか。
この列車は通過する。




