長いトンネルとロビーカー
そんな時、ひとりで回送で12m観光バスだと
狭い道では、バックなんて不可能だ。
バックカメラは画像が歪んでいるので、ぶつかるまで
よくは判らない。
あくまで、人を見つけるものなのである。
そういう時は、サイドミラーと勘でバックするしかない。
もちろん、バックしないのが一番なんだが。
長い長い丹那トンネル。
10分くらいはあるだろうか。
「さあ、僕らもそろそろ旅を楽しもう」と、山岡は
ロビーカーに疲れたらしい。
愛紗は「あ、すみませんお引止めして」
山岡は「引き止めたのは僕だよ」
そうでした。と、愛紗も笑う。
ロビーカーから、9号車に移るデッキ扉を開くと
急に静かになった。
その位、寝台車は静かだ。
「明日もいい旅になるといいね」と、山岡は言って
10号車、個室B寝台に移る。
雰囲気はあんまり、9号車と変わらないけども
少しだけ豪華な感じもする。
夜の旅を楽しむ、そういう感じに出来ている。
「いつも、この列車に乗ると、わくわくしたっけな」と、
愛紗は思う。
どこかにいけるって、そういう感じ。
子供の頃は何も判らないけど、夕方から夜に
外に居られて、列車で寝られるって
子供には特別な事。




