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オイル交換

「あそこのね、整備工場のとなりの坂ね、オイル交換ピットに

後退で進入ね」と、穏やかそうな紳士、斉藤は

愛紗に告げる。


若い女の子なので「バック」とか「入れる」と言うコトバを避けて(笑)

考えすぎくらいでいいのである。


にこにこ、穏やかな人なので

愛紗も和む。


ドアの空気が、まだ入っていないので

ゆらゆら、ひらいたまま。


古いバスは、停まっていると空気圧が下がってしまう。


ブレーキ系の圧は下がらないようになっていて、下がっているとブザーが鳴って

走れないが


ドアのは、シリンダーが古くなると空気漏れするので

非常コックを閉じても、しばらく閉じない事もある。


それで、この時もエンジンを掛けて少ししていたら

ドアが、すぅ、と閉じてばたり。


「はしりまーす」と、斉藤はあたりを見回して

大型バスを動かす。



9mなので、7mの中型よりかなり大きく感じる。


運転席はかなり大回りする感じで、後輪が隣のバスから出る頃には

前はぎりぎり、みたいな感じ。

そこから後ろのバンパーまでは、まだ2mくらいはある。


なので、大きくハンドルを切ると隣のバスに当たるから

ミラーを見て確認。


となりのバスの左ミラーが出ているからだ。





12mだと更に長いが、長くなるのはホイルベースだから

9mとそんなに違わない。


それに、観光バスは広いところしか走らない。




ゆーるりと、雲に乗っているようなゆったり感。


これはいいなぁ、と愛紗も思うけど

これで街中を走るのは、ちょっと怖い。



斉藤は、ゆーっくりとハンドルを切る。

速度を下げれば楽なのだし、小回りを急いでも

無駄。


時間は10秒も変わらない。



オイル交換は、リアエンジンのバスを

坂道に乗せて、高くした後ろのエンジンの下にもぐって行う。


なので、車輪の間が空間だし

外側も、ここの設備では空間なので

結構怖い。


脱輪したら終わりである(落ちた話は聞いた事がないが)。



「ちょっと、やってみる?」斉藤はにこにこ。

シルバーフレームの眼鏡、丸顔。温厚な紳士で

大学の先生みたいな感じ。



愛紗は、みんなこんな人ならいいのにな、と思う。


それなので、怖いけどやってみようかと思う。


「バスを真っ直ぐにしてね、真ん中に乗せれば落ちないね。

怖かったら、乗せる前に停めて、降りてみれば」


斉藤。


なんだ、そうかと愛紗も思う。


見れば、大丈夫(だが、乗せ始めてからは降りられないが)。


「その時の、坂道とね、バスの間の距離を覚えておいて。

タイヤがその距離なら、反対側は落ちないし

曲がったら、怖かったら停めて、中扉でも開いて見れば」と、斉藤。



愛紗は納得。


教えるのが上手な人っているんだな、と思った。



怖いのは、判らないから。

判ればいいんだ。



斉藤はバスを降り、運転席の横に立って後ろへ下がる。


愛紗はシートをあわせ、ミラーで左右を見た。

このバスは古いので、バックカメラがない。


それも少し不安ではあったが、まあ見ていてもらえれば。


リバースギアに入れて、ゆっくりクラッチをつなぐ。


空気クラッチなので、とても軽い。

静かに後退しているけど、なぜか曲がる。



「おーらーーい、おーらーい」と斉藤の大きな声が聞こえるが

運転席から身を乗り出して見ようにも、大型バスだと

窓が遠くて届かない。(笑)


仕方なく、ミラーで左右の後ろを見ようにも

慣れてないし、ミラーって歪んで見える。


真っ直ぐ下がってるかは、隣のバスと比べてみたりするけど。


それが曲がってるとアウト(笑)。



「はーい、すとっぷ」斉藤が言うので


バスを降りて見る。エンジンを停めて。

ギアは2。サイドブレーキを引く。


これは機械式シフトで、木材の床から長いレバーが伸びているので

空気が漏れても平気である。



前ドアを開けて降りてみると、結構曲がっていた(笑)



斉藤は「うん、ハンドルの中立がね、ゆるゆるだし。バックだとわからないね。

初めて乗ると」



リアーエンジンなので、ハンドルは軽い。

リアから引かれるので、キャスターアクションで真っ直ぐ走る力は弱い。


割と保持しないとダメだけど、遊びが多いのが大型である。


どこが真っ直ぐか、まあ、わからないのが普通。



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