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田村さん

「おー、たまちゃーん」


のどかな声の主は、田村。


大岡山のベテランドライバーで、以前

深町の教育を担当。

以前は4762、今は2666。


元々は、何か事業をしていて

軽貨物を始め、仕事が減ったので

大岡山に契約。


ダンプカーの運転手もしていたらしい。



気のいい、真っすぐな人。




「こんばんは」と、愛紗。



「あれー。日生くーん、あれ、たまちゃーん、カップル?」



愛紗は俯く。なんとなく恥ずかしい。



深町は手を振り「田村さん、お元気そうで」



田村は「だーめだーよー。たまちゃーん、戻って来ないと困るよー。車用意してあるから。課長に言ってあるよ。」




深町は「秋頃でしょうか




田村は「だめだよー。早く戻っておいで。じゃね。お二人さん、お邪魔さん」




愛紗は俯いて。



深町はにこにこ「お疲れ様でーす」





「いい人、田村さん。あの人のお陰かな。自信がついたな。」




愛紗は「どうしてですか?」





深町は「うん、たまちゃーん、落ち着いてやれば大丈夫って。言われて。最初は怖いもの。あんな大きなもの」




愛紗は「はい。私も。それに。女だといろいろ怖いから」




深町は「うん。それはあるね。僕もあるよ。

殴られた事。」



愛紗は「え?」




深町は「うん、特別支援学校って言ってね、少し常識的に振る舞えない病気の子供がね、バスに乗るの。そのひとりが。運転してたら

突然殴った、いや、蹴ったのかな。頭を。」




愛紗は「そんな事あるんですか。」




深町は「うん。まあ、それで僕も頭に来てね。首根っこ掴んで強引に下ろした」




愛紗「そんな事」とてもできない。

そう思う。




「その母親がね、駅で待ってて謝りに来た。

まあ、順当なら医者に行って、僕の怪我を診察して貰ってから許す所だけど。まあ、お母さんも可哀相だし。」




愛紗は「許しちゃったんですか」



愛紗にはとても出来ないだろうし、

そんな事は体が頑丈な深町だから出来るんだろうと思う。


もし蹴られたら、そこで倒れてしまうだろう。





深町は「うん、ああいう子供って心が歪んでるから、なんでも逆らいたいんだね。岩市と一緒」




愛紗は、「そうなんですか?」




深町「同じだよ。岩市も病院に行った方がいい。死亡事故を起こした運転士を3人も

いじめて死なせた」




愛紗「それは聞いています。それで深町さんは

信頼されてるとか」




深町「僕は何もしていないけどね。


間違いは間違いだと言っただけ。



そうすると、岩市が勝手に狂っただけだよ。


いじめられて育った子供だから。誰かをいじめないといられない。自分より下が居るって

思いたいのさ」




深町は、アメリカ合衆国精神医学会発行の

精神分析マニュアルDSMから引用して語った。



法廷で引用される、割と信用されているものだ。



「だから、そもそも人も優劣なんてないし

たまたま所長だとしても、日本の法律を

超える事はできません。

違法な事をしたいなら、処罰されますよ」




平然とそういうと、岩市は半狂乱になって

襲い掛かろうとしたそうだ。



でも、野田たちに取り押さえられた。





そんな事を繰り返して、そのうち警察に追われ



それが、本社のお客様相談メールに届いたそうだ。複数。



深町を処分しようとすると、時々あったそうで


匿名メールアドレスで。




クレーマー事件の時も、「運転士さんは正しい 」




ドア挟み事故の時も「駆け込み乗車した人が」




それで、バスにドライブレコーダーが装備されてから

クレーマーは減った。



「まあ、そんな世界だから、まあ、バスだけじゃないけどね。地震の後は仕事に困った人が多いから」



愛紗は「地震ですか?」




深町は「うん、あれで発電所が壊れたり、被災地に住んでた人は仕事がないし、知らない土地で仕事探さないといけなくなった。まあ、それでやけになってる人が多いから、この辺りも危ないの。交通とか。原発がいくつかあるでしょう。そこで働いてた人は失業してるから」




愛紗には想像もつかない。




「その前はのんびりしてたんだよ。まだ。

だからね、君は帰った方がいい。そもそも何で運転士になろうとしたの?」


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