正義
愛紗は、でも女の子だから
暴力なんて怖い。
お客さんを守るつもりのドライバーが
守られていないと出来ないなんて、と
思う。
歩いて、帰宅しようとする3人の前に
せかせかした走りのラッピングバスが
通り過ぎ、駐車した。
京都大阪、と書かれた
大岡山では行っていない高速路線の
宣伝。
4051号、担当は中村。
55才くらいの博打好きドライバーで
そのせいかどうか、高校教師だった前職を
持つ、変わった人。
悪い人ではないが、そのせいで自分勝手だ。
ドアを開けて、エンジンを切る。
丸顔で、短髪。
よお、と笑顔で。
「研修かー。いいなぁ楽で。走り出したら
俺の仕事分けてやるよ」と、既にパワハラ準備(笑)
そんなものだけど。
友利絵は「それ、ダメって指令が言ってたよ」
まあ、実際にはよくある。
女の子ドライバーが22時以降乗れないと
その後のダイヤは、男が代わるので
そうすると、男ドライバーの寝る時間が減るので
有り難くない訳だ。中村にとっても。
そんな風に、平等とか正義って難しい。
見てる場所でも違う。
まあ、人を傷つけなければ自由でいいのだ。
「女が増えてもなぁ。たまみたいに
男でも楽してるんでも居ないよりいいけど」
と、中村は年寄りだから愚痴っぽい。
体が衰えてくると疲労が回復しにくい。
でも、
口に出すのは男らしくないと友利絵は思う。
「いこっか」
「そうね」
「失礼します」
中村に付き合っても無意味なので
3人は帰る事にした。
「まあ、ああいうのが自治会とかで意地悪するんだろね、若いのに無理させて自分は楽しようとか」と、由香はよく見ている。(笑)。
大人って狡いって子供の頃思ってたのに
大人になると、どうして狡くなるんだろ。
と、それはみんなそう思う。
友利絵は「なんか教師って嫌なんだ。勝手だし」
体験もあるのだろう。
愛紗は、そんな記憶はないから
田舎って良かったのかな、と思う。
友利絵ちゃんが襲われて、お父さんが報復して。
そういうのって、やっぱり怖い。
もし人違いだったら、とんだ悲劇になってしまう。
争いなんてない所に行きたい。
そう思うと、大岡山じゃ無理、って言う
野田の言葉もよく解る。
人手が足りないから、手伝え。
そういう時、やっぱり押し付け合いになるから
女の子ダイヤになってるんだな、と
指令や、課長はよく考えてくれてると
感謝するのだった。
「じゃ、帰るわ、明日4時半だし。」と
友利絵と由香。
今日は、友利絵の車で一緒に帰る。
愛紗は、ダイハツ・ココアの
ベージュに乗っているが
これも、ガイドの仕事が夜遅くなるし
朝早いので
仕方なく。
会社の女子寮に居た頃は、誰かに
乗せてって貰ってたので
今、ワンルームに越して、間違いだったかな、なんて思ったりもした。
結構、バスガイドも変な人も居て
封建っぽい所もあって。それで
出たのもあった。
「大岡山、から出るなら」
これもいらなくなるな。と
安い中古を買ったので、ローンはないから
いいけど。
バスガイドって結構収入はあるけど
使う時間がないから
残る。
50万円だったこの車買うくらいの
貯金はあったりする。




