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第22話 ばかっぷる〜同棲編〜


「ねー大樹〜。


昨日、大家さんから電話が来てえ、


家賃3ヵ月もたまってるって怒られちゃった〜。


どおしよお〜」



「美咲のことを怒ったのか?


許せん。


俺がボコボコにしてきてやる」



「キャー、頼もしい〜。


って、それじゃここに住めなくなっちゃうでしょ、大樹。


悪いのは払わないこっちなんだし〜」



「そっか。


さすが美咲は冷静だなあ。


そういうところ大好き!」




大学生の大樹と美咲は、周囲も呆れるほどのばかっぷる。


念願の同棲生活をスタートさせたものの、


どこに行くにも2人べったりくっついてないと気がすまない大樹と美咲は、


バイトもすぐにクビになり、


いつもお金に困っていた。


しかし、そこはばかっぷる。


金の切れ目が縁の切れ目なんていう世間の常識は通用せず、


相変わらず2人のために世界はあるの状態を満喫していた。



「で、聞いて聞いて、大樹〜。


私、駅前でスカウトされちゃったの〜。


すごいでしょ。


私、芸能界なんか興味ないし、


大樹のそばにいつも居たいけど、


でもお金のためにデビューしようと思うんだけど、


どう?」



ジャーンと効果音を入れながら、


大樹にスカウトマンの名刺を見せる美咲。



「あれれ、これ芸能プロダクションじゃなくて


風俗じゃん」




キツネ目の美咲が芸能界にスカウトされるわけがない。



「なにそれ?」


「だから男がお金払って、


女にエッチなサービスをしてもらう店。


いろんなすごいことしなきゃいけないんだぞ〜美咲」



「た、大樹っ! 


なんでそんなことに詳しいのよ。


さては私に内緒で行ったことあるわね。


キーッ!!」



「ないよ、ないよ。


友達に聞いたの。


だから俺はよく分からない。


でも、美咲ならきっと人気になっちゃうよなあ。


こんなにかわいいんだもん。


AVとか出ちゃって、


いろんな雑誌に出て、


それから深夜番組なんかにも出て、


あー結局、芸能界デビューかあ。


俺の知らない遠い世界に行っちゃうなあ……」



そんなことより愛する美咲が風俗で働いてもいいのか?


大樹、論点がズレてるぞ!



「そうなの? 


なんだ、やっぱり芸能界なんじゃない。


私、大樹とのこの生活を守るために、


やっぱり芸能界デビューするよ。


大樹、ひとりくらい私が食べさせてあげる」



さすがはばかっぷる。


論点のズレも気にせず、


会話はドンドン進んでいく。



「美咲〜。俺、うれしいよ〜。


でも、その気持ちだけで十分だよ。


女に働かせたとあっちゃ俺の男がすたる。


芸能界より俺のそばにいろ!」



「あ〜ん、男らしい〜。


大樹、好き〜」




結局、美咲の風俗デビューの話はなくなり、


ここでいつものラブラブ・チュッチュ。


同棲してから半年。


毎日、この行為が10回は繰り返されるのだから、


おばかは飽きないというか、


バイトをクビになるのは当然というか……。




しかし、いくら愛の世界に逃げ込んだところで、


お金がないという現実の世界の問題は避けては通れない。




「なあ、美咲。


やっぱ俺たちにはパチンコしかないんじゃないか。


ほら、同棲する時もパチンコで稼いでこのアパート借りれたんだし。


家賃3カ月分24万。


パチンコで稼いじゃおうか」



「あーその手があったね、大樹。


さっすがー記憶力いい〜」



って、半年前のことだぞ、美咲。



半年前、


「2人の熱い想いさえあれば、


神様が味方してきっと出してくれる」


という大樹のノー天気な発案で、


パチンコに行った2人。



しっかり手を握り合って


1台のパチンコ台に気を送り込み、


見事、連日のバカ勝ちをおさめたのだった。


その額、50万円。


かくして2人は夢だった同棲生活を手に入れた。




さて、2匹目のドジョウを狙う大樹と美咲。


果たして、世の中そんなに甘いのか?



「半年振りだよね〜。懐かし〜ね、大樹〜」


お互い腰に手をまわして、


びったりくっついて通路を歩くと、


まわりの客は明らかに不快な表情となった。


が、筋金入りのばかっぷるは、


そんなまわりの空気を読む力が


もともと欠如しているので問題ない。



「あれ、美咲。


この前やった台なくなってる。


てゆーか、魚のばっかりだ」



「ほんとだね〜、大樹〜。


てゆーか、美咲、小さい頃、水族館大好きだったし〜」



「あ、俺も俺も。


海ガメなんかサイコー」



「キャー、うそ〜。


美咲と一緒じゃーん。


やっぱ、子供の頃から気が合ってたんだ〜」




とろ〜んとした瞳で大樹を見つめる美咲。


もちろん大樹も美咲の瞳を見つめ、


2人の“熱い想い”は沸騰寸前だ。



「じゃ、やるよ、美咲。


2人が世間の汚い大人どもに


引き裂かれるかどうかの瀬戸際なんだから、


死ぬ気で気を送ってくれ」



「うん、大樹。


美咲、大樹と離れるくらいならホントに死んじゃうから……」



「俺だって、美咲と離れるくらいなら死んだ方がマシだよ……」



「た、大樹……今日、勝てなかったら一緒に


死のうね。


ぐすん」



「ああ、でも勝つから心配するな。


美咲にもっとたくさん幸せをあげるから」



「あああ、大樹〜。


ダメだよ、こんなところで美咲を


泣かせちゃ。


え〜ん、え〜ん」



いいから早く、パチンコしろよ!



「大樹と美咲の好きな海ガメさん、揃うといいね」


「うん。海ガメだと3だから確変だからな」



大樹の左手を拝むように両手でぐっと握り締め、


「あ〜海ガメさんだ〜」、


「キャ〜、泡が出た〜」、


「なにこの水着の女〜、大樹、見ちゃだめ〜」


と、とにかく1回1回うるさいことこのうえない美咲。


命がかかっているわりには楽しそうだから、


ばかっぷるはやっぱり計り知れない。



が、3000円のカードがなくなったところで、


大樹ががっくりと肩を落とした。



「大樹、どうしたの?


まだはじめたばかりじゃん」



「いや、もうお金がないんだよ。


美咲。


死のうか」



つーか、命がけの勝負が3000円かい!



「待って、大樹。


美咲、大樹のこと好きだから死なせたくない。


風俗で働くよ、美咲。


大樹のこと好きだから」



「やだ。


美咲が人気者になって、遠くに行っちゃう……」



だからそんな問題じゃないってば。



「美咲、絶対に雑誌とか出ないから。


ならいいでしょ」



「う、うん」



いいんかい!



「でも、俺、美咲がいない部屋に


ひとりでいられない」



「じゃ、美咲のお客さんになれば。


あ、いい考えかも。


美咲がお金もらったら、


そのお金で大樹が


美咲のお客さんになるの」



「うんうん。


それいい。


風俗ってお金いっぱいもらえるらしいから、


家賃払っても


俺が風俗で遊ぶくらいもらえるよ、きっと」



「じゃ、大樹、


開店から閉店までずっとお客さんになって〜。


そうすれば美咲、大樹とだけエッチしてれば


お金もらえるじゃん。


超ラッキー。


早く、行こ、行こ。


さっきからエッチしたかったんだ〜」



ばかっぷる、恐るべし。


 

 

 

 

 


   

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