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振り返り系教師

 隣町ベイルースからエイリアに帰ってきたセバルトは、授業の計画を立てていた。


(これで、生徒は三人になったわけか。何をどう教えるか考えないとな。スケジュールなんかも。それぞれの連携とかも。そのためにも、ちょっとこれまでのこと思い返してみるか)


 セバルトは紙を前に、エイリアに来てからのことを考える。




 まず、ここに来て300年後の世界だと気付いた俺が考えたのは、もう英雄にならないようにして、スローライフを送るということだった。

 それは、昔のように英雄ということで人々から利用されたり裏切られたりということや、魔物との果てしない戦いがもうこりごりだからだ。ちょうどいいリセットのタイミング。


 そのためには、実力を隠さなきゃならない。英雄のような力があると思わせないことが大事だ。

 そのために俺は、ワルヤアムルの鏡という霊具を使い、呪いによって自分で自分の力を封じた。このため、他人に俺を認識されているときは、この世界のそこそこ強い戦士や魔法使い程度の力しか発揮できない。


 これは、隠そうと思っても何かあったとき、お人好しにも自分が力を発揮してしまうのを防ぐためだ。出したくても出せないようにするのが一番安心。しっかりとした儀式を行わなければ封印はとけないので、『つい』はなくなる。


 しかし、そうするともう一つ問題がある。

 緊急ではないが、何か大きな危険が迫っている場合だ。

 そんなとき、自分がかつてのように何十年も旅をして一人で魔軍と戦うハメになるのは困る。

 その解決策が、自分の力を他人に伝授すること。

 肉体、魔法、技術、知識、道具、そういった英雄を英雄たらしめていた資質を何人かの生徒達にそれぞれ教え、複数人の力で現代の英雄とする。

 何かあったときは、その新たな英雄にお任せってことだな。


 実際、その成果はすでに出た。

 エイリアに魔物が襲撃してきた際に、ロムスとメリエが活躍し、撃退することに成功したのだ。

 今回は、まだ対処できないほどの強敵もいたので、誰にも見られずひっそりと自分が対処したが、この調子で授業をしていけば、いずれ彼らだけでどんな問題も解決できるはずだ。


 その時こそ、完全に安心できる日々の完成だ。

 そのために今はのんびりと釣りや栽培をやったりしつつ、指導の日々を送っている。


 また、冒険者ギルドや魔法学校とも、メリエやロムスとの繋がりもあって、関わった。

 先日は魔法学校の開かずの箱を開けてみたし、あの学校の人達もロムスに触発されて力をつけてくれれば盤石だ。


 ただ、なにやら魔道具が暴走のようなことをしていると言っていたのは少々気になる。

 奇妙な天変地異といい、ベイルースへの街道で見た魔神の力によく似た物質といい、何か異常が起きているような気がする。自然か人為かまでは確定ではないが……いずれにせよ、英雄を育てて損はない、ということだな。

 

 そんな指導する相手もつい先日一人増えた。

 高級素材を素性を隠して売るために隣町のベイルースに行ったときのことだ。竜人レカテイアに、人間世界のことを教えてくれと頼まれたのだ。人間の社会や、人間の領域にある精霊関連の遺跡や遺物に興味があるという。


 魔物との窓口があれば、不要な戦いを避けたり色々と便利なこともあるだろう、ということで、人と魔のことを知る英雄候補として、第三の生徒にした。

 なんだか魔族(人間のように知性を持つ魔物のこと。魔物の中でも知性を持たない動物のようなものは魔獣と呼ばれる)に持ってたイメージと違って気さくで軽い感じだけれど、ああいう魔族がたくさんいれば助かるな。


「……と、こんなところか。生徒は増えて、懸案も増えたって感じか。まあでも結構授業は順調だし、この調子でやっていけばなんとかなるだろう。ブッキングはしないように注意しないとなあ」


 そして三人分に増えた授業計画をセバルトは立てると、ロムスへの指導と快眠目的を兼ねて捕まえたゴールデングースの羽の羽毛布団に入って眠りについた。

 相変わらず無茶苦茶快適な寝心地だ、と満足しながら。



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新作【追放されたからソロでダンジョンに潜ったら『ダンジョン所有権』を手に入れました】を書き始めました。 ダンジョンにあるものを自分の所有物にできる能力を手に入れた主人公が、とてつもないアイテムを手に入れモンスターを仲間にし、歩んでいく物語です。 自分で言うのもなんですが、かなり面白いものが書けたと思っているので、是非一度読んでみてください!
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