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EX・夏だ!海だ!釣りだ! 中編

 メリエが舟を海に浮かべると、餌と釣り竿を持ってセバルトとロムスも乗り込む。

 そして、沖へと舟をこぎ出す。


「んーーーーー! 風が気持ちいい。それに水がきれいで深いし、あははは!」

「危ないですよ、メリエさんっ」


 メリエが身を乗り出して水をばしゃばしゃ弾き、ロムスが心配そうに声をかける。


「大丈夫大丈夫、それにいざとなったらロムス君に海の水をがばっとなんとかしてもらうよ」

「さすがにこんな広い海はどうにかできませんよ~」

「そこまでです。そろそろポイントだから、魚を逃がさないようにしないと」


 セバルトは二人に釣り竿を渡す。

 メリエは海から手をあげ、釣り竿を持つ。

 ロムスも釣り竿を受け取り、先ほどとった小蟹や小魚などの餌を取り付ける。


「それじゃ、のんびりやりましょう。今日は休養ですし。まったりと」


 セバルト達三人は舟から釣り糸を垂らしてのんびりと釣りを始めた。

 しばらくは静かな波の音だけが響いていた。

 響いていた。

 響いて――。


「全然釣れないんだけどー! 先生ー」

「メリエさん、短気は損気ですよ。釣りというのは、釣れない時間も楽しむものです。スローに行きましょう、スローに。ノルマがあるわけじゃないんですし」

「それはそうだけど――あ、先生のかかってるんじゃない?」


 メリエが指差したセバルトの糸が垂れている水面が、波紋が揺れている。

 おそらくはかかってると思いつつ、セバルトはあわてない。


「慌てない慌てない。しっかり食いついてから上げないといけません」

「でも逃げられたら――」


 ヒュッ、と空気が音を鳴らした。

 と同時に体長1mほどもある魚が宙を舞う。

 セバルトが釣り竿を素早く上げたのだ。


「はい、釣れました。結構な大物がこのあたりにはいますよ」


 メリエは目を瞬かせて釣り竿を握るセバルトの手を見る。


「見えなかった……釣り上げた時の手の動きが」

「僕もわかりませんでした。音がしたと思ったら魚が先生の手の中に」

「どれだけ速いのよ先生……」


 と驚き呆けた声を出したメリエ。

 ロムスは感心した様子でセバルトを見ている。


 少しはりきりすぎたかな?

 と思うセバルトだが、しかしこの二人ならまあ多少力を見せても大丈夫だろう。もうかなりの実力があることは知っているし。


 何はともあれ、セバルトを皮切りに、他の二人も魚がかかり始めた。

 リズミカルにぽんぽんと釣れるとのは気分良く、三人は時間も忘れて魚を釣っていく。


 とその時、メリエの手が止まった。


「ぐぬぬ……なんだかすごく重い魚がかかってるわ」

「メリエさんが重いと感じるほど? それは……相当な大物ですね。鯨だったりするんじゃないですか」

「冗談じゃなく本当にそれくらいあるかも。これまでの十倍力がかかってるもの。……むむむ……」


 メリエの足が舟の中で引き摺られていく。

 セバルトとロムスは慌てて後からメリエが落ちないように引っ張るが、なるほど本当にとてつもなく重い引き(・・)がある。


「頑張ってくださいメリエさ――これは!?」


 なんとか三人がかりで糸を全力で引くと――そこからあらわれたのは、島のように巨大な鮫だった。

 ジンベーザメという種類の巨大鮫がいるが、それよりもさらに、遥かに大きいそいつは、口を大きく開けると、水を丸呑みして海流を作り出す。

 それはセバルト達の小舟も引き寄せて――。


「先生! このままじゃ飲み込まれちゃいます!」

「舟から飛び降りなきゃ!?」

「いや……違います。このまま突入しましょう」

「え!?」

「え!?」

「舟をおりるよりも安全です。それに、海まで来たんですから、課外授業をしないとね。さあ、科学とバトルの時間ですよ」


 三人は、舟に乗ったまま、島鮫に飲み込まれた――。




「で、セバルト先生? 鮫の中で課外授業ってどういうことなの」


 島ほどの大きさがある巨大鮫の腹の中で、メリエが腰に手を当ててセバルトに詰め寄っていた。

 それも当然である。食べられたのだから。

 しかしセバルトは飄々とした態度で答えた。


「せっかく海に来たのですし、遊ぶだけじゃなくて授業もやれば一石二鳥でしょう。この島鮫のお腹の中から脱出するという課題をクリアしましょう。大丈夫、なんとかなりますよ」


 セバルトには安全な確信がある。

 何よりも自分がついているのだから、いざとなれば内側から島鮫を捌いて刺身にして外に出ればいい話だ。


 セバルトの思いつきにメリエだけでなくロムスもさすがに困惑気味だったが、セバルトの落ち着いた様子を見て覚悟を決めたようだ。


「メリエさん、やりましょう。せっかく珍しい体験ですし!」

「おお?! なんだかロムス君がそんな無謀な方向に燃えているなんて珍しいわね。そうされたら私が腰引けてられないなー。それじゃあ、脱出しよっか!」


 こうして、島鮫体内川上りの授業が始まった。

新作【追放されたからソロでダンジョンに潜ったら『ダンジョン所有権』を手に入れました】を書き始めました。


ダンジョンにあるもの全てを自分の所有物にできる能力を手に入れた主人公が、アイテムを大量に手に入れたり、モンスターを仲間にしたり、その力で色々なことをして歩んで行く物語です。


自分で言うのもなんですが、かなり面白いものが書けたと思っているので是非一度読んでみてください!


小説へのリンクは↓にあります。



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新作【追放されたからソロでダンジョンに潜ったら『ダンジョン所有権』を手に入れました】を書き始めました。 ダンジョンにあるものを自分の所有物にできる能力を手に入れた主人公が、とてつもないアイテムを手に入れモンスターを仲間にし、歩んでいく物語です。 自分で言うのもなんですが、かなり面白いものが書けたと思っているので、是非一度読んでみてください!
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり、スローライフ出来ないみたいですねw ブックマークしときました。
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