EX・夏だ!海だ!釣りだ! 前編
とてもとてもお久しぶりです!
気分が乗ったので後日談書いてみました。
それにしても季節感0な件。
全三話です。
★久しぶりで記憶が消えかけの人もいるかもなので超簡単なキャラクター紹介。
セバルト……遥か昔に魔王を倒した英雄。時間を越えて現代に来てしまい、家庭教師をしながらスローライフを送る。
ロムス……セバルトの生徒の少年。真面目な魔法使い。
メリエ……セバルトの生徒の女性。豪快な剣士。
「セバルト先生ー! 準備できるわよー!」
金髪のツインテールをゆらしながら、メリエが小舟を砂浜から水の上へと押して行っている。さすがの腕力、修行の成果が出てるなとセバルトは満足げに頷いた。
と、今度は逆方向からセバルトに声がかけられた。
「先生、こっちも用意できました!」
その声の主はロムス。
木で作った簡易的な釣り竿に糸と針を取り付け終わったところだ。
「それじゃあ、行くとしましょうか。海釣り林間学校に」
「おー!」
「はい!」
セバルト、ロムス、メリエの三人は舟に乗り込み、沖へと舟をこぎだした。
セバルトが生徒二人と海に来たことの始まりは一週間前に遡る。
いつものように、ロムスやメリエを鍛える家庭教師をしていたときだった。
メリエがこう言った。
「ねえ先生、せっかく空飛ぶ船が手に入ったんだから、どこか課外授業がしたいんだけど」
そう、紆余曲折を経て、空飛ぶ船を手に入れたのだが、まだほとんど使っていない。
たしかにセバルトも自分が住む町の周囲は結構色々なところに行き、スローライフの体勢を万全に整えたけれど、まだ他の地域にはあまりいってなかった。
たとえば南国でのんびりバカンスなどといのもスローライフっぽくていいのではないかと、メリエに言われてセバルトは思いついた。
それに、空飛ぶ船が手に入った今なら、遠くに行くのもそう大変ではない。
とくれば、もう決まりだ。
この前空飛ぶ船を使った時は、暗黒魔道師と戦ったり、ワイバーンと戦ったりしてスローのスの字もなかったから、スローライフに活用しなければもったいない。
そう思ったセバルトは、「海を見てみたい!」というメリエとロムスの言葉を聞き、のんびりと海釣りでもしようと南の海へと空を飛んで来たのだった。
到着したのは、ホームタウンから空を飛んで半日のところにあるリベラ海岸。
たまに泳ぎに来たり魚を釣ったりする人がいるが、町からは離れている穴場スポットらしい。
飛行船を着陸させて、三人は砂浜に降り立った。
「うっそー! 海ってこんなに大きいの!? すごいじゃない! ねえロムス君、すごいよ!」
「は、はい。本では読んだことありますけど、湖とは全然違うんですね」
二人の生徒、メリエとロムスは初めて見る海にはしゃいでいる。
セバルトは過去勇者として旅をしていたころに何度か見たことあるが、何度見ても雄大な景色、そして聞くだけで深さ広さがわかる波音だと思う。
「それでは、まずは釣り餌を集めましょう」
釣りには餌が必要だ。
ということで、潮だまりで餌を集める作業を開始する。
まずはメリエが大きな石を持ち上げる。
「いよーっと! 鍛えた甲斐があったわ」
腕力自慢だけあり、大きな岩でも軽々と持ち上げどけることができる。
すると、岩陰に隠れていた小魚や蟹やその他色々な生き物が姿を現す。
となると次はロムスの出番だ。
「水を集めます――はぁっ!」
ロムスの得意分野と言えば水の魔法。
魔法図を描くと、潮だまりの水を丸ごと宙に浮かせた。
これはいわば魔法の水槽。
海の水を丸ごと使った天然の水槽から、中にいる魚たちは外に出られない。
「ほほーう、これは便利。小さい生き物って捕まえるの大変だもんね。ロムス君の魔法なら一網打尽で楽ね。さっすがー!」
「そ、そんなたいしたことないです。メリエさんの方が凄いですよ、あんな大きい岩を持ち上げられるなんて」
「ふふん、まあね。私は結構努力家だからね」
メリエが後輩に褒められて気持ちよくなっている間に、セバルトは森に行っていた。
ちょうどいい太さの枝を探して、剣でささっと切っていく。
本来は鉈や斧でやることだが、セバルトの剣技を持ってすれば、どんな刃でも釣り竿にするための枝を切断することはたやすい。
さすがに舟をその場で作るのは時間がかかりすぎるので、あらかじめ作って飛行船で運んできたものを使う。
これももちろん、セバルトが切った木を使ったものだ。
家のまわりにはいくらでも木はあるから、材料にはことかかない。
そうして三者三様に仕事を済ませると、釣りの準備は整った。