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思い出されたかもしれない

お待たせいたしました、第四章の連載開始しました!

ひとまず5のつく日に更新していくつもりです、よろしくお願いします。


「マスプレ草。水棲モンスターが嫌がるので航海の時に役に立つ。料理に入れると魚の臭みがとれる」


 セバルトは家の中で、資料を作っていた。

 作成をコツコツ続けていた採取物や動物、魔物のことを色々まとめた図鑑である。

 ブランカに力を貸してもらって作るこの図鑑があれば、色々な役に立つ。災害が起きた時、悪人が悪巧みした時、魔物が襲ってきた時。


 そんな時に、セバルト以外の人達でも十分に対応することができるはずだ。しっかりとした役立つ情報があれば。


 白い大狐の神獣ブランカの豊富な知識と、セバルトがかつての旅で蓄えた知識を合わせ、様々なものの有効活用法、手に入る場所、様々な脅威への対処法、遭遇しやすい場所、などをまとめることができた。


(これがあれば、俺が動かなくてもすむってわけだな。よしよし)


「はい、できました。完成です」

「おおっ、ついにできたか! 見せてみるがよい!」


 セバルトの向かいに座っていたブランカは、尻尾を大きく振りながら、資料に鼻先を近づける。

 肉球でページをめくり、ブランカはふむふむと資料を読んでいく。


「そうだそうだ、このあたりは我が記憶を取り戻してすぐの時に書いたところだったな。我ながら完璧な記憶。本来はこれなのよ」


 完成した図鑑のできに満足げに、ブランカは尻尾を振っている。

 封印されていた記憶を戻した甲斐があるというものだ。


「それでは、これの写しを作ってもらいましょうか」

「うむ。我の叡智を広めることを許そう」


 そしてセバルトとブランカは冒険者ギルドに行って原本を渡し、冒険者ギルドは各方面に渡すための写しを作っていった。

 まずは公的な組織におかれて役に立てられることだろう。そして、いずれは他の町にも広まり、今後大いにブランカの記憶が活躍することは間違いない。


 冒険者ギルドからの帰り道に、ブランカが思い出したように言った。


「そうだ。この町の近くにも遺跡があったはずだぞ」

「エイリアの近くにですか?」

「うむ。我が封印されるずっと前からあったものだから、相当古いものだ。まだあるかは知らぬが、塔が」

「へえ、ちょっと気になりますね。今度行ってみましょうか」


 相づちを打つセバルトは、塔があるという北に目をやった。




「なんだか、ドキドキするね、先生」

「ええ。鬼が出るか蛇が出るか、気分が昂ぶりますよ、ふふふ」

「意外と好きね、こういうの。……そういえば旅人だったか」


 メリエはセバルトの顔をまじまじと見つめた。


 今日はセバルトとメリエは、家庭教師の授業で武術と体力を磨く特訓をしていたのだが、それが終わった後、ブランカが話していた遺跡へと向かっていた。


 北の山々を越えたところにある岩場をさらに進んで行くと、今度は低い山がまばらにそびえる地帯がある。

 その山の一つに、洞窟があった。

 セバルト達は、その中を奥へと進んでいく。


 やがて、洞窟を抜けると大きな谷の底にたどり着いた。

 そこに、目指すものはあった。


「こんなところに塔があったのね」

「ええ、全然知りませんでした。絵になるシチュエーションですね」

「旅してまわってただけのことはある。こういうの興味津々な方だったとはねー。そういえば、ブランカは?」

「今日は魔法学校に行く。神獣たる我の知る古代の魔法について講演を聴きたいということだ。高級スイーツでもてなしてくれるのだ。と、言っていました」

「簡単に釣れる神様ね。それじゃあ、とりあえず調べてみよっか!」


 塔の周りをぐるっと一周すると、茶色い巨大な扉が見つかった。

 メリエが早速鉄の取っ手を手に取り、引っ張るが。


「むむっ、開かないわね」


 眉間に皺を寄せて押してみるが。


「ぐぐぅ、開かないわね」


 横にスライドさせようとするが。


「がああ! 全っ然、開かない!」


 入り口は固く閉ざされたまま、びくともせず、メリエはどたどたと地団駄を踏んでいる。


「これは、何かしら封印されてるってことでしょうか」

「また封印なの? 面倒なことしすぎよ」

「開かずの箱は封印されてませんでしたけどね。それはともかく、大事なものが中にあるなら、鍵くらいかけるでしょう」

「それはまあ、そうね。……でも、それってつまり、中にはいいものがあるってことだよね?」


 頭から湯気を出していたメリエが、機嫌を直して口角を持ち上げる。セバルトは慎重に頷いた。


「可能性、ではありますが。遺跡にはたいてい宝がつきものです。特にこのように入り口が閉ざされていれば、中身が残っている可能性も高い」

「うん、うん! 開かなくて良かった。もしかしたら古代の強力装備とかあるかもしれない。それを身につければさらに強くなるってことだよね。封印された遺跡の装備を身につける。凄く英雄っぽいよー、燃えてくるね!」


 メリエが双眸を輝かせる。

 もうすっかり、中にはレアアイテムがある気分だ。


 と、メリエは塔の壁に手を伸ばした。

 セバルトの方を見ると、「扉から入れないなら、壁を上るってのが一つの手だよね」と言いながら、ごつごつした石の塔に手をかける――瞬間だった。


「わっ!」


 驚きの声をあげながら、メリエは背後に2mほど吹き飛ばされた。

 しゃがんで着地しつつ、目を丸くして壁を見つめる。


「何もしてないのに、はじき飛ばされた」

「大丈夫ですか? 体は?」

「それは、怪我とかはないよ。単に飛ばされただけで」

「外壁から上るのも防いでいるってことですね。用心深い」

「ちぇー。いい案だと思ったんだけどなあ。そこまでやる?」


 セバルトも塔をあらためてみる。

 大きな石を積み重ねて作ったという様相の灰色の塔は、何の変哲もないように見えて、実はかなりの防備が施されているらしい。


 これは冗談ではなく、中には重要なものが眠っている可能性が出てきた。


 とりあえずどうにもできないので、日も暮れるしセバルトとメリエはエイリアへ戻ることにした。

 次の授業の時までにでも、何か考えておこうという話をして。




 翌日、朝。

 セバルトは一人で再び塔に来ていた。


「臭う、臭うわ。宝の臭いがぷんぷんするわ……なんてね、謎の演技すぎるな」


 無駄にテンションが高い理由、それは本当にメリエの言った通りにこの遺跡に英雄に相応しい装備がある気がしていたからだった。

 だからこそ、セバルトは一人で確認しに来ていた。


「さて……うおおおお!」


 封印された扉に手をかけ、体内マナを爆発させ一気に力を入れて押す。

 みしみしと音がして、埃を散らしながらも入り口はあっさり開いた。


「ごり押し最高。高度な封印も強力な力の前には無力なのだ」


 魔王や魔神すら倒した腕力の前には、封印の扉もひとたまりもなかった。かび臭い臭いと共に、数百年、あるいは数千年ぶりに内部が露わになる。

 セバルトは中に入り、扉を閉めて灯りを掲げた。


 外から見た時の想像と違い、中は狭かった。

 と、いうよりは、塔の中央部が丸々壁で覆われている。

 外周部だけがぐるっと一周する通路になっていて、そこに上に向かう階段がある。


 変わった構造だ思いながらセバルトは上へと進む。

 二階以降も同じような構造で、五階建ての一番上までそれが続いた。


 すると、塔の中央部分から今度は降りていく階段があった。


「なるほど、内側が壁で覆われてたのはそういうことか」


 塔の中央部を通って、今度は下に降りていく。

 すると、今度は単純な通路ではなく、迷路のようになっていた。

 狭い通路がいくつも分岐していて、なかなか面倒な構造だ。

 そこまで広い空間ではないはずだが、なかなか時間がかかる。そして、下へと降りる梯子がかけられているのを見つけると、さらにその下も迷路、さらに迷路となっていた。


「なんて鬱陶しい。作った人の顔が見てみたいな」


 愚痴りながら一階へと再び降りると、ようやく迷路は終わっていた。

 そこは広い空間となっていて、開放感がある。

 そして、その中に輝くものをセバルトは見つけた。


「これは……盾だ。しかも」


 うっすら青く輝くラウンドシールドに水の魔法を放つと、盾に当たった瞬間、弾け飛ぶように霧散した。


「魔法防御効果があるな。相当に強力な。本当に、俺が使ってた装備品並の逸品だ」


 これを使えば、セバルトの生徒達の戦力もアップする。

 早速持って帰ろうかと思ったところで、セバルトは動きを止めた。


(待てよ……これは他のことにも使えるんじゃないか?)


 優れた防具がある。

 遺跡がある。

 だとしたら。


「人参にしてみるのもいいかもしれない」


 セバルトは口の端を持ち上げた。

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新作【追放されたからソロでダンジョンに潜ったら『ダンジョン所有権』を手に入れました】を書き始めました。 ダンジョンにあるものを自分の所有物にできる能力を手に入れた主人公が、とてつもないアイテムを手に入れモンスターを仲間にし、歩んでいく物語です。 自分で言うのもなんですが、かなり面白いものが書けたと思っているので、是非一度読んでみてください!
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