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第95話 教えて欲しい

「あなたの魔法はね。もう失われたと言われているものなのよ、たぶんね。失われる前でも希少とされていた魔法のはず。だから今あなたがその魔法を使えていることがいくつかの可能性を示しているの」


「なるほど」


「理解しているようね?頭の良い子。それで答え合わせをしてくれるかしら?」


「理解なんて何も。正直僕にも分かりません。僕は孤児なので両親のことも知りませんし、物心ついた時には魔法が使えていたので、誰かから譲ってもらったということもありません。ご満足いただけないかも知れませんが」


「そう。魔法を譲ってもらったとはわたしも考えていないの。あなたの魔法は人に渡せる種類のものではないはずだから。断言できないのはあなたの魔法を完全には特定できていないからよ。よかったら魔法名を教えてくれるかしら?」


「魔法名・・・最初に頭に浮かんできたあれのことですか?それを知ってどうするんでしょうか?」


「わたしが話したい本題と関係があるの。嫌ならば別にいいわ。本題の方もどうしてもというわけではないから・・・お茶を飲んで帰る?」


チッ!ここまで拉致ってきておいてよく言うぜ。俺が話しに興味を引かれていることも分かってるんだろ?まぁ話し合いでというポーズを崩さないでいてくれるのはありがたいんだけどね。


「空間収納というのが僕の魔法の名です」


とりあえず適当ぶっこいて見る。


「空間収納ね。ウタ。どうかしら?」


「我の記憶にはない」


「そう。ということはハズレね。仕方ないわね。じゃあまたお茶にしましょうか」


あら。簡単に諦めたな。駆け引きはできないか。まぁいいか。


「ハズレですか。よく分かりませんが・・・お茶いただきます」


水生物がまたお茶をいれてくれた。お菓子とかはないのかな?


「テトラ様は一体どういった方なんでしょうか?騎士様がそちらのウタ様をスイセイ様と呼んでいたんですが」


「わたし?わたしはそうね、なんて言ったらいいのかしら。最近はあまり自己紹介する機会もなかったから困るわね。貴族ではないわ。あなたと同じね。平民の魔法使いというところかしら。だから様なんてつけなくていいわ。ウタは私の友達ね。水精というのは誰かが勝手につけた名前だからわたしは知らないわ」


「なるほど」


「一応私に仕えてくれているの。けどわたしは友達だと思ってるわ」


ふむ。やはり主従関係なのか。


「騎士の話はね。わたし達が恐れられているからよ。魔法使いとしてね」


凄腕の魔法使い様なわけね。


「煩わしい虫を潰していたら、自然とそうなってしまったの。でも満足してるわ」


こわいねどうも。そしてうらやましい。やはり力があると無理が通るか。


「フフフ。お茶がだいぶ気に入ったようね。帰る時に茶葉をあげるわ。お土産に持って帰って」


マジか。気前がいいエルフだ。前に知り合ったキレやすいエルフとは大違い。エルフ女に対するイメージを更新してもいいかもしれない。


「それであなたは何者かしら?孤児と言っていたけど、どうして騎士と一緒にスライムの相手なんてしていたの?追跡の魔法がかかったものも持っていたようだけど?」


テトラさんにざっくりとこれまでの体験を話す。もちろん自分の都合のいいように編集した話をね。


「そうなの。あなたが選んだ道とはいえ大変そうね。遠くない将来あなたは自分の魔法に殺されるわよ」


内角をえぐるような直球だな。


「そうなりますか?これまではなんとかなっていたんですけど」


「そうね。わたしだっていつ気が変わるかわからないわよ?素知らぬ顔で嘘ついている子供にプライドを傷つけられたとかね。理由はなんだっていいのよ?つまりね、強大な力は無視できないってこと。自覚が足りなければあっと言う間よ?」


確かにちょっと嘘ついちゃったレベルのことで殺されかねない世界だよね。俺が嘘ついたと確信しているみたいだしさ。あぁやだやだ。


「それとも、わたしを相手にしてもなんとかなると思っているのかしら?」


「とんでもないですよ。僕の魔法は攻撃用ではないですから」


「それでも随分とご活躍だったらしいじゃない。ウタに聞いたわよ?」


「そんなことありません。テトラさんのスライムからは逃げるしかなかったですし」


テトラさんは俺の回答に不満そうな顔だ。


「テトラさんは僕の魔法を知っているようでしたが。何か理由というか、何を知っているんですか?」


さっき話した通りよ、失われた魔法ねと答えが返ってくる。これは聞いてもダメなパターンだな。俺が嘘を吐いてる限り、魔法関係は何も教えてもらえなそうだ。


「テトラさん。実は僕の魔法の名前は空間収納ではありません。先ほどはあなたを警戒して嘘をつきました。どうでしょうか?ここで取引してもらえませんか?僕は本当の魔法名を教える。あなたはその魔法についての情報を僕に教える。ダメですか?」


俺の魔法は謎な部分がいくつかある。それについての情報が得られるかもしれないとなればここでリスク回避をしてる場合じゃない。


どうあがいても目の前のこの人には勝てそうにないから、警戒したところでほとんど意味がないしね。聞いた話が本当かどうかの保証なんてないけど、もしかしたらすごい話が聞けるかもしれない。


ただ取引とは言ってみたものの、俺の立場なんて畳一枚分もない。立っているのがやっとなネコのひたい程のスペースしかないんだ。ダメ元で敵陣に突っ込んでいくしかない。ダメなら死ぬだけ、拷問はヤメテね?と相手の言葉を待つ。


するとテトラさんは考えるそぶりも見せずにいいわよと言ってお茶を口にした。その余裕な態度が癪に障る。


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