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第45話 敵?

「キーン。どこだ?」


ランカムは焦る気持ちを抑え声を上げたが返事は返ってこなかった。ここは既に国境付近、下手に大声を上げれば巡回の騎士に見つかってしまうかもしれない。オオトリの面々は周囲を警戒しながらキーンを探す。


「ドミニク。キーンの反応は?」


「ない。いきなり消えた」


「チッ!抜かったな。さらわれたか?それともあいつ自身が?魔法だとしたらなんだ?やはり隠密系か?」


「わからん。だが消える直前までは普通だった、さらわれた動きでも、魔物に襲われたとかいう動きでもない。自分の意思で消えたな。魔法・・・」


「ランカムの気配察知で見つからないならどうしようもないな」


パームは舌打ちし、ドミニクは頭を掻く。


「何か考えているとは思ったが、やはり動いたな」


ランカムがつぶやく。


「そりゃそうだ。お互い信用を得るほどの時間もなかったからな。疑心暗鬼の行き止まり。俺でも同じこと考えるぜ」


ドミニクは苦笑しながらそれにこたえる。


「チッ、あのガキ。おとなしくしてればコラリオまで連れて行ってやったのによ」


パームは少し苛立ったようにそう吐き捨てたが、もうキーンのことは諦めているようだ。それはオオトリのパーティー全体にも言えるようで、これは素早く頭を切り替えねば命を落としかねない環境に身を置く一流冒険者の習性とも言える。


「仕方ない。あいつは一人で行くと決めたんだろうからな。ここであいつを探して

まで助ける必要はない。俺達は俺達で行くぞ」


ランカムは仲間にそう告げると、国境越えの時間まで仮眠しようと簡易テントに戻った・・・が。


「それでは話が違うだろう?オオトリの諸君」


木の陰から黒ずくめの男が現れた。キーンに手紙を渡した男であり、オオトリにキーンの護衛を依頼した者でもある。


「あんたか。監視は全て撒いたと思っていたんだがな。俺の魔法はすっかり錆びちまったようだ」


ランカムは黒ずくめの男の気配に気づくことができなかった驚きを強力な理性で抑え、男に軽口を叩く。状況を把握するための時間稼ぎだ。


「キーンはどこだ?」


「俺達も探したが、いきなり消えたよ」


「そんな言い訳が通ると思っているのか?消えただと?本気か?」


「悪いね。うちのリーダーの魔法でもとらえきれなかったんだ。あきらめてくれ。受け取った金は返そう」


ドミニクは会話に割り込んで黒ずくめの反応を見る。


「依頼放棄か?認めるわけないだろう。お前らがなんらかの方法でキーンを匿っている可能性もある。放っておくわけにはいかないな」


黒ずくめの男はごく自然な動きで背負っている剣を鞘から放つ。


「4対1でその自信か。こわいねぇ。お仲間がいるのかな?」


「・・・」


ドミニクの誘いには乗らず、黒ずくめの男は無言のまま動こうとしない。パームはそれを隙と見て矢を放つ・・・が、黒ずくめはサイドステップで矢をかわし、そのままの勢いで木の裏側にすばやく回りこんでいった。


「気配が消えた!隠密系かもしれん!」


ランカムが叫ぶ。自身の魔法が日に何度も欺かれる経験はこれが始めてだろう。先ほどまでは抑えられていた焦りが今は声に現れている。


「集まれ!壁を張る!」


パームは仲間を集めると自身の魔法「ウォーターウォール」を四方に展開。


「上を警戒しろ!・・・あいつ、こないのか?」


黒ずくめの男が仲間を呼びにいっているのならその間にこの場から逃げる。しかしその選択はすぐに消えることになる。


水の壁のない空から矢が1本2本。ドミニクとゴクノバは剣で矢を払う。が、これはあきらかにおかしい。こんな攻撃、通用しないのは分かりきったことだ。


「狙いはなんだ!」


ランカムは仲間全員に向かって叫ぶ。


「俺達を消耗させるのが狙いか?壁が消えるまで待つつもりかもしれない」


ドミニクがこたえる。


「仲間を待ってるんじゃないか?さっさとここを離れたほうがいい!」


パームは嫌な予感を感じて逃げを提案。


「よし!撤退し・・・パーム!」


ランカムが言い終わる前にパームが倒れた。背中には大きな傷が刻まれ服には黒いシミが広がっていく。パームの作った水の壁が一斉に形を崩し流れていく。


「クソ!別の魔法使いでもいるのか?だがそんな気配はなかったぞ!」


黒ずくめの使った魔法の正体は予想できている。しかしパームがやられた方法が分からない。おそらくは黒ずくめの男とは別の魔法使い。しかし敵が何人いるかわからい。ウォーターウォールも崩れてしまった。ランカムの焦りはどんどん大きくなる。


「ドミニク、パームを担げ!強行突破するぞ!」


「逃がすわけないだろう?」


パームが自力で動けない状況で圧倒的に有利になったと思ったのか、黒ずくめの男が姿を見せた。


「どうだ?さっさとガキを連れてくる気になったか?本当に見失ったのならお前らにもう用はない。死んでもらうぞ?こたえろ」


黒ずくめの男までの距離は20メートルほど。ドミニクとゴクノバの持つ身体強化の魔法を使えば、数瞬で首を刎ねに走れる。


「やめておけ。動けば殺す。答えを聞く前に殺したくはないんだがな」


全て見透かしたような黒ずくめの男のセリフに、ドミニクとゴクノバは動くのを躊躇う。時間を少しでも稼ぐため、ランカムが適当なこたえを返そうとしたその瞬間・・・黒ずくめの男は地面に吸い込まれるようにして消えた。


「殺したくはないか。ハハハ!気が合うじゃねぇか。俺もそうだよ」


子供の笑い声が夜の森に小さく響いた。


「キーンか!」


ランカムが叫ぶ。


「ランカム!索敵しろ!」


キーンも叫ぶ。ランカムはすぐに気配察知の魔法を発動。さきほどまでは感じられなかった気配が1つ。


「ゴクノバ、行くぞ!パームの仇だ」


二人はすぐに走り出していった。


「ドミニクさん。パームさんの状態は?」


そういって微笑を浮かべるキーンをドミニクは無言で見つめていたが、ハッと我に返るとすぐにパームの傷の手当を始めた。


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