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第178話 森の拠点にて2


「キーン様。巡礼の者達というと聖域を移動しているあの者達のことですか?」


「ああ。あの頭のおかしい連中のことだ。あいつらにはお前らと同じような汚れ仕事をする実行部隊がいることは知ってるよな?」


「はい。聖域の維持管理のための武力要員がいます。我らも度々衝突しました」


「お前らと?」


「はい。聖域の調査をしていれば時として戦闘に発展しますので」


「調査っていうと?」


「脅威度の調査です。聖域は王国の支配下にありません。王国から独立自治を認められた勢力なのです。ですから定期的に調査していました。守り人の戦力分析が主な内容です。守り人の人格、魔法の趣向、好戦的かどうか等々」


「うん?衝突ってのは守り人と戦ったのか?」


「いいえ。実際に剣を交えたのは巡礼の者達の実行部隊です。守り人は聖域の外には出てこれないので戦う必要はほとんどありません」


「だよな。あれ?聖域って王国の支配下にないって言った?」


「はい。聖域は半ば独立国のような立場を持っています。これは大抵どの国でもそうだと思います。国と聖域の間で協定が結ばれているはずです」


「へー。それだけあの連中が持つ力が大きいってこと?」


「はい。聖域は拠点としての能力が非常に高く、そこに戦力を集中されれば非常に厄介です。さらに各地の聖域の繋がりが強い。ひとたび戦端が開かれれば密に群がる虫のようにどこからともなくヤツラは集まってきます。巡礼の者達は各地にある聖域をまわっていますから情報が素早く拡散されるのでしょう。最初は聖域を利用した籠城戦、次に援軍の到着を見て包囲戦へと移行していきます」


「そりゃやりたくねーよな」


「はい。ヤツラは損得勘定をしません。採算度外視の消耗戦を平気で続ける連中です。ですから・・・」


「あぁ大体分かったからそれはいいや。話が逸れちまったが聞きたいのは実行部隊のことだ。お前はキメラって知ってるか?」


「キメラ?いえ知りません。それはどういうものですか?」


「魔物の肉を植え付けられた人間ってくらいの意味だと思ってくれればいい。半分人間で半分魔物ってよ。巡礼の連中はそんなことをやってるんでな」


「なんと!まさかそんなことが本当に。しかし我らは聞いたことも・・・いえ、失礼しました。お役に立てず申し訳ありません」


「いや、いい。ただそういうのがいるのは間違いない。人間が魔物の力を使うんだ。なかなか手強いぞ。いずれお前たちも戦うことになるかもな」


「お話ありがとうございます。あとで皆とも共有致します。出来ればキメラについてもう少し詳しいお話をお願いしたいのですが」


「あぁいいぜ。だが先にこっちの話だ。巡礼の連中の戦闘要員でやたら強いのがいなかったか?俺は獣人でバカみたいに強いやつに会ったことがあるんだが。獣人じゃなくても名の通ったヤツとか知らないか?」


「はい。もちろん何人かは調査はしてあります。名の通った獣人だとガーニャという黒い犬の獣人が有名ではあります。他にも巨人のポールハン、リザードマンのランベルク、人族だとミリー・・・」


「そっか。黒い犬ね。俺の知ってるのとは多分違うな。まぁいいや、あとでそういう連中の特徴をまとめて資料にして出してくれ」


「はっ!了解しました」


「あーあと一応聞いておくがお前らは御神体についての情報を何か持ってる?」


「御神体についてとはどういう意味でしょうか?」


「あれは結局なんなのかってことだ。聖域とはなんぞやって意味にもなってくるんだけどさ」


「聖域の歴史については王国の記録を遡っても追いきれません。一般的には神話の類い、おとぎ話の続きというところです。各地の御神体については我らも記録はしています。しかし御神体とは一体何なのかという答えは持っていません。聖域や御神体を再現したり複製したりすることに成功したという話も聞いたことはありません」


「うん。なるほど」


「御神体を破壊し聖域を解いたという事例はありますが、御神体を移設したという例はこれまで無かったのではないでしょうか?キーン様はあれを一体どうするつもりなのでしょうか?まさか聖域をつくる術をご存じなのでしょうか?」


「あぁ一応それらしい方法は知ってるよ。ホントかどうか分からないし、いまの俺達じゃとても無理だけどな。いまはあれがいい水源になってるってことで十分だ」


「はい。あの御神体から得られる水は貴重です。聖域になるならないなど些細な問題だとしか思えないほどに」


「ホントだよな。うん、まぁこんなとこか。あとはなんかあったっけな。うーん。ないかな。お前らからはなんかあるか?」


「できましたら今後の我らの予定をお聞きしたく」


「そうだな。家が出来て落ち着いたらルート開拓に行ってもらう。この拠点は俺の魔法で深山幽谷とでもいう場所に作ったからな。外界との連絡手段がいまのところない。つまり俺が死んだらお前らは終わりなんだ。まぁ水とか肉や木の実くらいは森からなんとか調達できるだろうがそれだけじゃやっていけんだろ?だからそろそろ外へ通じる道を作りたい。もちろん完全に外へと繋げはしない。いま誰かにこの拠点を知られる訳にはいかないからな。それでまずはルート開拓だ。どうだやってくれるか?お前ら本来の仕事とは程遠いけど?」


「はい。もちろんやらせて頂きますキーン様」


「頼む。じゃあ戻っていいぞ」


「はい。失礼します」







さてと。予想はしてたけどやっぱり大した情報は得られなかった。ただクソエルフに突っかけるのはまだ早いのは分かった・・・うーん。俺の戦闘力は確実に上がってるとは思うけど決定的ではないもんなぁ。


とりあえず聖域をあと何個か落とすか?どっかの聖域に行って使えそうな御神体を盗めばここの拠点の強化になる。悪くないよなぁ。あとは魔道具が欲しいな。出来れば魔剣とか魔槍なんていう武器型のやつ。


そうすればここの連中に装備させて対クソエルフにも投入できる。うん、いいよね。なんにせよ魔道具はいくつあっても困らないもんな。


とすると確実なのは前に行ったドワーフのところか。いまなら楽勝であの地下街みたいなところを落とせるだろう。いや、落とせるか?ドワーフの戦闘力は正直分からないけど肉体は頑強そうだった。そして魔道具をたくさん持ってる。


負けはしないと思うけど勝ちきるのは難しいか?よく知りもしない相手に無謀な突っ込みをかけるのは俺の得意技であり悪い癖でもある。


仕方ない。かったるいけど様子を見ながらゆっくり攻略しよう。って違う違う。ドワーフと戦争する必要はないよね。「転移」があるんだし、こそっと忍び込んでお宝を盗めばいいだけだじゃないか。


装備を整えてあいつらの力を上げる。盗んだ魔道具の数によってはもっと人を増やしてもいいな。役に立ちそうな御神体もかっぱらってこの森の拠点をより強固にするんだ。よし。当面はそれで行こう。俺は立ち上がって・・・。


「ワールド」


ニセ・時止めを発動。世界がまるごと水中に沈んだかのようにその流れを緩める。目の前を飛ぶハエのような虫が止まって見える。羽の羽ばたきまでくっきりと確認できる。


腰に吊るした剣を抜く。王都で戦った騎士達のように素早く。徹底的に動きの無駄をなくす。スーパースローのこの世界ならそれができる。


ニセ・時止め発動状態では身体強化が出来ないものの、それでも剣は素晴らしく速く、滑らかに鞘から抜き放たれてそのまま虫を斬り落とした。


「ハハハハハハハハ」


ニセ・時止めがゴミ性能なんてとんでもなかった。俺はまだまだ強くなれる。




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