第17話 魔法のある現実
結果からいうと、護衛隊は全滅。馬車にいた全員は助かった。では何が起こったのか?ずばり魔法である。あぁ思い出しただけで嫌になる。
目の前には炭化したゴブリンの死骸。魔法によって焼かれたものだ。たった1発の魔法でゴブリンは真っ黒ボディに大変身してしまった。
治癒魔法の時にも想像はしたが、実際目の前にした攻撃魔法は絶望の塊のようなものだった。着弾と同時に大きな火柱が上がり、ゴブリンを飲み込んでいった。
馬車の乗客は大喜びしている。御者は死んだ護衛のことを考えているのか、少し悲しそうな顔だ。自分も助かったのだからみんなと一緒に喜ぶ場面なんだろうけど、一刻も早くここから立ち去りたいという気持ちしか湧いてこない。
それにしても、あんなのはだめだ。完全に違う。みんなを見捨てて自分だけ助かろうとしていた奴のセリフじゃないのはわかってるけど、あれはだめだ。否定したい。けど魔法は現実にある。それを使う人達がいる。こわい。魔物も恐いが、魔法はもっとこわい。
早く孤児院に帰りたい。院長先生に会いたい。家族に会いたい。
あぁ、頭がクラクラする・・目の前が真っ白に・・・
「気がついたか?」
どこだここは。記憶にない場所だ。うん?どこかの宿っぽいな。
「大丈夫か?どこか痛むところはないか?」
ケビンさんか。痛むところはないかって?
「だいじょうぶだよ。ケビンさん。ここは?僕どうしたんだっけ」
ケビンさんは大きく息を吐くいてから笑った。
「お前は急に気を失って倒れたんだよ。頭は打ってないようだったが・・そんでここはセイスルフトの町の宿だ」
「あれからどれくらい経ちました?」
「ついさっき鐘3つだ」
「じゃあもう外は真っ暗ですね」
「あぁ。今日は色々疲れただろ?無理しないでそのまま寝てろ」
「そうですね。そうします」
なんともいえない気持ちの悪さがこみ上げてくる。
何も考えたくない。今日はこのまま寝よう。おやすみなさい。