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第16話 ゴブリンだ

入学手続きを済ませ、宿に戻って荷造りを行う。新学期の開始は約3ヵ月後。王都と我が町の往復は1ヶ月もあれば十分可能。ということで一旦ケビンさんと一緒に町へと帰ることになった。


長距離馬車に揺られ、牧歌的な風景を楽しみながらぼーっとする。これが実にマイルドで気持ちいい。魔物に対する恐怖はあるものの、王都へ向かう旅の間にかなり薄れていた。


何度か魔物にも遭遇したが結局一度も戦闘にはならなかったというのが大きい。威嚇するだけで魔物は退いてくれた。今回も魔物が襲ってこないことを願うのみだ。


農地、放牧地を通過して人の生活圏を抜ける。遠くには小さな林のようなものが所々みえる。見渡す限りそれ以外何もない。やっぱり空が広いなぁ。あぁ馬車の衝撃でお尻が痛い。孤児院のみんなは元気かなぁ?などと物思いに耽っていると、ケビンのおやじとほかの乗客達との会話が聞こえてきた。


「そうかい。隣の坊ちゃんがねぇ。まだ小さいのにすごいんだねぇ」


「じゃあ、ケビンさんはずっとその坊主の護衛をしていたんですか?」


「あぁ、そうなんだ。こいつはまぁ、年に似合わず落ち着いていてな。大して世話もかからなくてよ。行きの旅も順調だったし、今回はだいぶ楽してるぜ」


ケビンさんが肘で小突いてくるが無視。会話に混ざるのは面倒だ。


「でも、町長からの指名依頼なんて、ケビンさんも優秀なんですね。剣を使うんですよね?貴族様じゃないようだけど、何流なんですか?」


「俺のはアルト流だな。ちょこっとスミラン流もかじったことはあるがな」


へー。ケビンさんってアルト流なんだ。てっきりバランス型のトバイム流かと思ってた。アルト流って防御主体だったよな。


「あんた達はどこまで行くんだ?」


「あたしとこの人は次の町までだよ。息子夫婦が住んでてねぇ。孫の顔を見にいくのさ」


「そいつはうらやましいな。俺みてぇな独り者の冒険者には縁がねぇ話だけどよ」


「ケビンさんだっていつまでも独りでっ・・・」


「ゴブリンだ!!」


馬車の護衛の一人が叫ぶ。すぐにまた別の一人が大声を上げる。


「数は6!剣4、弓2!剣には盾持ち1!馬車準備!合図を待て!いいな?」


「いつでもいいぜ!」


御者が緊張気味にこたえる。


「よし!行くぞ!」


護衛隊は小走りにゴブリンの方に向かっていく。チッ。ゴブリンめ。どこに隠れていやがった!ってそれより今は護衛隊だ。彼らは4人。全員剣を使うようだが一人は弓も持っている。彼らの実力はわからないがゴブリン6匹相手ではおそらく厳しいだろう。


ゴブリンなんて雑魚の代名詞だろ?なんて思ってはいけない。この世界のゴブリンはかなり強力な魔物の部類に入るのだ。知能が高く、道具を使い、連携して襲ってくる。そして人族よりゴブリンの方が圧倒的なパワーをもっている。


これはやばい。厳しいどこか、護衛隊は全滅コースとみた!魔法でも使えるなら話は違うが彼等は魔法使いではないと聞いている。


ケビンさんを見ると表情が険しい。俺を連れて逃げるべきか、戦いに加わるべきかを考えているんだろうな。もうすでに馬車は止まっている。下手に逃げても別のゴブリンの待ち伏せがあるかもしれないので、護衛隊からある程度の距離をとって停車。これがゴブリン遭遇時の定石だ。


クソッ!クソッ!よりによってゴブリンかよ!こんなところで「自宅」なんて使いたくないんだよ!「自宅」を使って一人生き残ったところで、もう孤児院には帰れなくなるだろう。怪しすぎるもんな。だからといってここにいる人達を「自宅」に招待する気はない。


悪いがあなた達を助ける気はないよ。最終的には一人で緊急避難させてもらう。そうなっても孤児院のみんなにはいつか会いにいけるさ。クソッ!!


あっ、一人やられた。残りの護衛は3人・・・。

目を閉じる。叫び声が耳を突く。残された時間は少ない。


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