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第15話 合格発表

合格発表の日がやってきた。ケビンさんと一緒に学校の掲示板前で合格者の番号が張り出されるのを待つ。周りにいるのは綺麗な格好をした貴族組がほとんどで、それには劣るものの真新しく清潔そうな格好をした商人連中もちらほら見える。


対して自分の格好はどうだろう。ヨレヨレのシャツと、つぎはぎの目立つズボン。どちらも汚れが目立たない暗い色の服なのだが、ちょっとよく見れば簡単にシミを発見できる。靴は穴が開いてしまったのを内側から布をあててインクを塗り、なんとか目立たないようにしている。


そんな格好の為か、周囲からはだいぶ奇異の目で見られているようで、誰も近くによってこない。貧しい平民感モロ出しだからそんなものだろう。文句を言われたりしないだけありがたい。お願いですからこのままそっとしておいて下さい!


「オイ、きたぜキーン」


「はい。いよいよですね」


「おまえ、不合格だったらどうするか考えてあるのか?」


「もちろんですよ、ケビンさん。当然あなたに教えることはできませんけどね」


「ハッ!分かってるならいいぜ。俺は結構お前のこと気に入ってるんでな」


「実は僕もケビンさんのこと結構気に入ってるんですよ。どうです?怒りましたか?生意気だって」


「いいや、話が通じる相手でよかったぜ。これで10歳なんだからな。笑えるぜ。余計な手間がかからないならそれでいい」


ケビンさんは満足そうに頷いた。おっと。掲示板を確認しよう。えーと2571番はあるかな、あるかなー?うーんと、えっと、お!あった。65位か。


結構上位で合格ってことでいいよね?中身はおっさんのクセにその程度かよ!なんて言わないでね?算術はいいんだけど、国語とか歴史はちょっとまた違うでしょ?受験対策の時間も少なかったしさ。


「ケビンさん。番号ありました。65位のところです」


「おぉ。やったな!おめでとさん」


「ありがとうございます。ほっとしましたよ。では入学手続きに行きましょう。確認お願いします」


「了解だ。これで町長にいい報告ができるな。面倒がなくてよかったぜ」


泣きながら喜んでる子、呆然と立ち尽くしてる子、不合格に号泣している子。それらを横目に見ながら入学手続きをするために校舎の方へ向かう。


親の態度も様々だ。なかには子供を放って足早に帰ってしまう親もいるようだ。痛々しくて見てらんないねこりゃ。


合格できて一瞬肩の荷がおりた気がしたけど、これから先の生活を考えると気が重くなってくる。勉強も大変そうだが、貴族には細心の注意を払わなければならない。ホントに面倒だ。孤児院で成人までのモラトリアムを味わっていたほうがどんなによかったことか。


町長さんよ。俺はあんたの操り人形じゃないんだぜ。もうしばらくはあんたの思い通り演じてやるが、その内あんたにもたっぷり踊ってもらうからな。


と愚痴を吐きながら入学手続きにいくキーン君なのでした。


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