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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第6章 街道の要所エンセナーダ 暗躍Ⅲ④

 ソニーによるとブランはまだエンセナーダを出ていないとのことだった。ガルドの情報なので信ぴょう性は高い。ガルドはエンセナーダから出る魔道士を完全に把握していた。その網を掻いくぐることは至難の業だ。


 ただ、誰かが匿っている可能性も高いらしい。それにより完全にはブランの居場所を特定できないのだ。ノルンは関わってはいないことを確認したとガルドは言っていた。これ以上数字持ちの魔道士が介入してほしくない。ブランは数字持ちではないが、匹敵するほどの力を有してる。ノルンなど敵対しないに越したことはない。二人が組むなんてことがあればガルド一人ではブランの師匠とは言え対応できる筈もない。それだけは避けなければならなかった。


「正確な居場所は特定できないと言うのなら、大体の場所は判るってことなのか?」


「そうですね、いくつかの候補はあるみたいですが、大きなお屋敷が立ち並ぶ一画で、ただ建物の中に入らないと正確なことは言えない、というのがガルド老師の見立てです。」


「数字持ち同志はお互いを感知できない、という話は聞いたことがあるが、数字持ちでもないのに探すのが難しいんだな。」


「何か探知魔道を遮る工夫がなされているのかも知れませんね。ということは相手は簡単には探らせない準備が出来ている、ということになります。それもガルド老師が見つけられないほどの工夫となれば、下手をしたら別の数字持ちの魔道士が絡んでいるのかも知れませんね。」


 それは最悪の想定だ。ロックたちの味方になってくれそうな数字持ちの魔道士たちはエンセナーダには居ない。ガルドは自分の弟子でもあるので協力してくれるのは間違いないが相手が判らないと作戦を立てることも難しい。


「アクトレス卿の次はまた大物が出てくるんじゃいなか。もう勘弁してほしいものだ。」


 グロウスにしてみれば事件に財務大臣が関係していただけで手を妬いている。影でそれを操っていたのが、また大物貴族なんてことは事態を悪化させるだけだ。ガーデニア州全土を揺るがす大事件に発展しそうだった。


「これは最早俺だけの手には負えない。兄者と親父に相談しないと駄目だな。」


 ワーロン=アクトレス財務大臣の拘束だけでも大変な事態なのだ。さらに大貴族が、となると太守であるカール=クレイ公爵に出てもらわないと到底事態は収まらないだろう。それにはまず誰が黒幕なのか確実に突き止める必要がある。


「ガルド老師にもご足労願えないだろうか。」


 ガーデニア州の城付き魔道士では束になってもガルドの足元にも及ばない。そもそも武で立つ州であり魔道は下に見られる風潮があるのだ。


「それは元々そのつもりです。逆にブランを捕まえる手伝いをしてほしい、と仰っていました。」


「それは有難い。ここでは手狭になろう、城に移って親父たちを交えて対策を練ることにしよう。」


 一行は黒鷹城に場所を移して対本部のようなものを

立ち上げることにした。


「お前たちは厄介ごとばかり持ち込んでくるのだな。少しは儂を楽にしてはくれんのか。」


 グロウスにしても進んで厄介ごとを連れて来たわけではない。父の言い分は素直に頷けることではなかった。


「父上、グロウスも好き好んでのことではありません。」


「そんなことは言わなくとも判っておる。くれぐれも間違いまないよう、確実なときだけ踏み込むのだ。それと誰の屋敷であったか、先に必ず報告したうえで実行すること、先走るでないぞ。」


 カール=クレイ公爵はそれだけ言うと引き込んでしまった。レイズ公太子の相手をするため、という名目でだ。後を取り仕切るのはカシル伯爵。騎士団の将軍も務めている、グロウスの兄だ。文武両道ではあるが、少し文に偏りがちなところがあるガーデニア州太守の嫡男であった。


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