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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第6章 街道の要所エンセナーダ 暗躍Ⅱ⑤

「そういえばジェイが戻ってないみたいなんだけどロックは知らない?」


 ジェイは朝ソニーの行方を探すように言われて、最近人探しばっかりだな、と愚痴りながら出て行ったきり戻っていなかった。


「いや、別々で行動していたからな。何か掴んだのかも知れない。」


「今度はジェイが捕まってしまったとか。」


「それはないだろう。あれでもそこそこ魔道が使える使い魔だからな。」


(儂の悪口を言うておったじゃろ)


 ちょうどジェイが戻った来たようだ。


「いやいや、魔道がとても使える素晴らしい使い魔だと感心していたんだよ。齧歯類に見えても実は翼ある猛禽類の王だと。」


(ルークよ、お主までそんなことを言うようになったとは。齧歯類に見えるのは余計じゃ。)


「それでジェイ、収穫はあったの?」


(そうじゃな、ソニー=アレスは見つからなんだ。影のガルドは見つけても近づかないがな。ただ別の者の痕跡はあったぞ。)


「別の痕跡?」


(そうじゃ。影のガルドは見たことが無いので判らんが、キスエルやノルンたちと同等の魔道力の痕跡を見つけた。あれは多分ガルドではない。)


「別の数字持ちの魔道士ってことか。」


(かもしれん。ただ、)


「ただ?」


(あれは闇魔道じゃ。それも深淵と呼ばれる闇魔道の一種の痕跡であった。何人かの命が奪われたのかも知れん。)


「それはただ事じゃないな、おい、使い魔、俺をそこに案内しろ。すぐに部下たちと向かうぞ。」


 グロウス男爵は騎士団員を呼び隊列を組んですぐに出発した。ロック、ルークも同行する。ジェイは案内役だ。ミロは公太子と留守番だった。公太子は最後まで行くと言い張ったが、ミロを守っていて欲しい、と言われて渋々納得したのだった。代わりに何があったのかを報告するためにダークが同行するよう言い遣った。


 つい先日は留守番をさせられたグロウスは今回は先頭を切って馬を走らせていた。毎回留守番するつもりは毛頭なかった。そもそも騎士団は警察機構を兼ねているのだ、事件が起これば騎士団の出番だった。若い男女が何人も消え、命を奪う深淵の闇魔道の痕跡があったことでグロウスは完全に自分の役目の範疇だと確信していた。本来の仕事を行うだけだ。一応、念のため兄に報告するよう伝令を送っておいた。グロウスは剣では兄に負けないが、やはり頭が上がらないことには変わりがない。


(ここじゃ。)


 そこはエンセナーダでも高位の貴族たちの住む街だった。爵位を持つ名家ばかりだ。


「まさか、ちょっと待て、本当にここか?」


 そこはグロウスも知っているアクトレス家の屋敷だった。当主はワーロン=アクトレス伯爵。今はガーデニア州で財務大臣を務めている。ガーデニア州でも大物中の大物だ、さすがにグロウスでも簡単には手が出せない。


「ここは拙いぞ。作戦を練らないと駄目だな。出直しだ。」


 グロウスは堅実な判断が出来る。確実な証拠も無しに屋敷には突入できない。ソニー=アレスどころの騒ぎではなかった。ワーロンが若者たちの失踪に関わっているとしたら大問題だ。死人が出ているとしたらもっと悪い。一族連座で取り壊されるかも知れない。そんなことが判らないワーロンではない筈なのでグロウスには俄かに信じられなかった。


 グロウスたちは一旦男爵家に戻り緊急作戦会議を開かざるを得なかった。

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