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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第6章 街道の要所エンセナーダ 暗躍Ⅱ④

 ロックが聞いてきたのはソニーの消息ではなく最近噂になっている神隠しの話だった。なんでも若い男女がある日突然いなくなってしまうらしい。駆け落ちするでもなく、特に居なくなってしまう理由がないにもかかわらず二人ともが誰にも告げずにいなくなるのだ。

 

 居なくなってと言っても、どこかで遺体が見つかったという事もない。何かの事件に巻き込まれてはいるのだろうが生死は不明だった。


「その話は俺の所にも入ってきているから事実だな。ここ数日急に起り出したらしい。今多分部下が捜索しているはずだが何も手掛りがないと報告を今朝も受けたところだ。」


「そうなんですね。」


「ロック、その件が何か引っかかるの?」


 ソニー=アレスの消息を訪ねていたはずが、そんな噂話だけを聞いてくるなんてロックらしくなかった。


「そうなんだ。なんだかただの誘拐事件にも思えないんだよ。身代金の要求もないそうだ。それにそれほど裕福な家の若者たちではないらしい。庶民の交際している男女ばかりを連れ去っているみたいなんだ。ただ誰もその現場を見た人が居ない、って話だ。」


「そんな沢山の人が消えているの?」


「今の所判っているだけで十組二十人が消えたみたいだ。」


「それはやはり組織的な匂いがするね。でもそれとソニーが繋がるってロックは思っているの?」


 そこが不思議だった。話だけ聞くとただの誘拐事件、もしくは集団失踪事件だ。


「判らない。でも何か引っかかるのは確かだ。ソニーが関係しているとしても理由が判らないし、そんな犯罪行為に手を出す立場でもない筈だしな。」


 アストラッド侯の息子であるソニーがエンセナーダで多くの男女を攫ったとなると外交問題でもあるし単純に犯罪行為にもなる。ソニーが迂闊にもそんなことに手を出すとも思えなかった。


「でもソニーがエンセナーダに戻ったタイミングと男女が消え始めた時期が合うことも事実なんだ。」


「うむ、そうだな。そのソニーとやらの身柄を確保して俺が直々に尋問してやろう。」


「グロウス先輩は出ない方がいいですよ、お互い顔見知りですし。」


「いや、そもそも連絡も無しにアストラッド侯の嫡男がガーデニア州を勝手に行き来するのは問題だ。それだけでも尋問するに値するだろう。」


「それはそうですが、グロウス様、カシル様にご相談なされたうえでご判断される方がよろしいかと思われますが。」


「お前が口を挟む問題ではない。」


 グロウス男爵家の執事は普段は大人しい老人だがさすがにこれば拙いと主人を止めに入ったのだが一蹴されてしまった。主人の為には諫言も辞さない、できた執事だ。


「グロウスさん、僕もそう思います。公太子のこともまだお話になってないのでしょう?」


 グロウスはレイズ公太子の滞在も父や兄に報告していなかった。レイズ公太子の強い意向ではあったが。その上、ソニー=アレスを捕まえて尋問するなど問題にならない筈が無かった。

 

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