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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第6章 街道の要所エンセナーダ 暗躍Ⅱ③

 エンセナーダの街の中心から少し南にある黒鷹城にガーデニア州太守であるカール=クレイ公爵は住んでいる。62歳になったカールは、しかしまだまだ壮健だった。長男のカシル=クレイは伯爵位を得てガーデニア州騎士団の将軍を拝命している。まだ24歳ではあったが武よりのは文に秀でた少しか細い感じがする青年に育っていた。しかしカールにとっては自慢の息子だった。


 カシルの母親は公王ロウル=レークリッドの遠縁にあたる伯爵家から迎えた女性だった。カールとは20歳も年の離れていたが良くできた妻だった。ただ元来身体が丈夫な方ではなくカシルを産んでしばらくしてこの世を去ってしまった。カールは嘆き悲しんだものだ。その後母親の実家の縁者も次々と亡くなってしまったのでカシルが伯爵家を継いでいる。ただいつかはカールの後継ぎとしてガーデニア公爵家を継ぐことになるだろう。


 数年後後妻を今度は聖都セイクリッドのローランド伯爵家の縁者である男爵家から娶った。そしてすぐにグロウスが生まれた。グロウスは兄と違って頑健で丈夫に育った。勉強はあまりしてこなかったが剣の腕は確かだった。今ではガーデニア州騎士団の将来を担う存在だと目されている。兄が太守、腹違いの弟が騎士団長ということになり、ガーデニアは万全の体制を約束されていると誰もが思っていた。


 グロウスの母親の実家にも跡継ぎの男がいなかったので今はグロウスが男爵家を継いでいる。しかしグロウスはガーデニア州騎士団の仕事が忙しかったのでセイクリッドの母方の実家には幼年学校時代の一時期しか身を寄せたことが無かった。青年学校は寄宿舎住まいだったからこともあった。



「ロック、今日も街を探索してきたのか。」


「グロウス先輩、おはようございます。ただの朝の散歩ですよ。」


 ただの散歩にしてはロックはかなり汗をかいている様子だった。朝から剣の修行をやっていたのか、街中を歩き回っていたのかのどちからだろう。


「ルークは公太子と朝食を採っているいるぞ。」


 あれから一週間、ルークとレイズ公太子は何か昔からの親友のように急速に親しくなっていった。どこらあたりに通じるものがあるのかロックにはさっぱり判らなかった。


「そうですか。あの二人は兄弟か何かのように仲がいいですね。まあルークは変な奴じゃないので心配はないでしょうが。」


「ダークは心配しているようだがな。あいつも強いくせに心配性なところは意外だ。」


「レイズ公太子の傍に仕えていれば、それは心配性にもなるでしょう。セイクリッド青年学校の時もお二人でよく宿舎を抜け出して幽霊屋敷の探索とかをやってたじゃないですか。」


「たまにお前も連れ出して、な。」


「そうですよ、俺は寝ていたところを無理やり起こされて何も判らずに連れていかれて、気が付いたら誰も使っていない教会とか関係者が死に絶えた貴族の御屋敷とかに居たんですから。」


「面白かっただろ。」


「そんな訳ないでしょう。でも確かに少しは楽しかったかも知れません。剣の修行以外は興味が無かったですから退屈にしていましたし。」


「お前はそういう奴だ。少しは剣以外のことも考えないと駄目だぞ。」


「身体を鍛えることしか頭にない先輩に言われたくはないですよ。」


「ロック、帰ってたんだ。それで収穫はあった?」


「おう、朝市の人に色々と聞いてきた。」


 やはりロックは街での情報収集に余念が無かったのだ。


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