第6章 街道の要所エンセナーダ 暗躍②
「もう逃げられないと観念しろよ。」
ロックたちは行き止まりの路地に馬車を追い込み出口を塞いだ。見たことがある顔の男が降りて来た。
「やはりあんたか。あの時色々と知っているようだったが。」
「お久しぶりですね。どうかされましたか?」
「いや、終焉の地からミロを攫っただろうに。」
「何のお話です?わたしどもはただの商人、それら様が突然追いかけて来られたので怖くて逃げた次第です。」
とぼけた男だった。こちらはジェイの報告でミロが居ることは確認している。
「理由や目的はどうでもいい、ミロを返してもらおうか。返してくれさえすれば、何も言わないと約束しよう。」
ロックは一旦下手に出ることにした。そこにいる数人を制するのは簡単だったが、ロックは強い相手と戦うことは望んでいても手練れでもない者たちと剣を交えたくはなかったのだ。
「そういう訳には行きません。ミロさんと言う人は、私どもとは無関係ですから。」
男の自信ありげな口調にルークが反応する。
「ジェイ!」
(うむ、確かにミロは居らんようだ)
「おい、いつのまにミロと別れた?」
「いえいえ、滅相もありません。元々、そのミロさんと言うお方は存じ上げないのです。お許しくださいませんか?」
男をこれ以上問い詰めることはできなかった。実際にミロが居ないのだ。それにしても、いつミロを別行動にできたのか。
(ついさっきまでは確かに居ったぞ)
責任を感じてジェイが言う。それはルークも感じていた。ジェイやルークに悟られずに相手はミロを移動させたのだ。魔道士の仕業としても、相当な使い手だろう。
ロックたちは一行を開放した。証拠がないので仕方なかった。形だけはロックたちが謝ることになってしまった。
「ジェイ、頼むぞ。」
ジェイに一行の跡を追わせることにして、ロックたちはエンセナーダでの落ち着き先を探すことにした。街に入ってすぐに一行を見つけ追いかけたので、今自分たちがどこにいるのか、皆目見当がつかなかった。
「ここは、とごなんだろう?」
「エンセナーダの中心街近くではあるようだね。ほら、あそこに騎士団詰所がある。」
確かにそこにはガーデニア州騎士団の詰所があった。
「強い奴は居るかな?」
ロックの興味はそれだけだった。
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。」
「判っているって。でも血が騒ぐんだよ。さっきの奴らの腕はあまり大したことなかったしな。ただ、終焉の血よりは強かったみたいだから、あんな商人のなりをしていたけど正式に剣を学んでいたとは思うんだ。どこかの騎士団なのかも知れない。」
「ここの騎士団ではなくて?」
「ガーデニア州騎士団なら、あんな変装みたいなことはしないだろう。」
「そうだね。でもなんかあの男の人は引っかかるものがあったんだけど。」
「ルークもか。俺もちょっと引っかかっていたんだ。俺たちのこととも知っていたしな。」
「僕のことは知らなかったけどね。ただの商人じゃないことは間違いないよ。」
とりあえず二人は安宿を決めジェイの報告を待つことにした。




