第6章 街道の要所エンセナーダ 陸路を行く⑤
「なかなか追いつけないな、このまま追うか、少し街道に出て先回りするか。」
「行先は判るの?」
「トレオンを回避するにしても北東に向かっているのは確かだから最後はエンセナーダだと思うんだが、ジェイ、ちょっとあいつらの様子を見て来て
くれないか。」
(判った、少し待っておれ。)
ジェイはそういうとふっと消えた。ルークの探査魔道ではもう届かない距離を離されてしまっていたのだ。
道なき道を馬車で走るには速度は出せないし馬車も傷んでしまう。先行している終焉の地は気にせずに走り続けているようだ。幹部であるルシアが居ないので誰が指示を出しているのか判らないが、できるだけロックたちを引き離したいのだろう。
しばらくしてジェイが戻って来た。
(北東に向かっているのは間違いないな。だが馬車がもう持たないのではあるまいか。そのような話をしておった。)
「そうか、じゃあ追いつけるかも知れないな。方向は間違っていないよな。」
(うむ。このまま進めば大丈夫じゃが、こちらの馬車も持たないのではないか。)
「そうだね、少し速度を緩めないと駄目かも知れない。」
ロックたちの馬車も悲鳴を上げだしていた。
「ジェイには悪いけどときどき様子を見てきてもらって、こっちは街道に戻って馬車を傷めない程度にできるかぎり急いで行こう。」
二人はミロのことも気になるが今のところ本人をどうこうしようとする様子はないようなので、とりあえずトレオンからエンセナーダに至る中街道に出て先を急ぐことにした。
「シェラック様。」
「今度はどうした。」
「実は街道を外れていた馬車がこちらに向かって来ているのですが。」
「街道を外れていた?どこから来たというのだろう。」
「判りませんが、かなり急いでいる様子です。もうすぐ追いつかれそうです。」
シェラックたちの馬車五台は隊列を組んで移動していたが、その馬車は一台で限界を超えて速度を出しているようだ。
そして、シェラック一行にロックたちの馬車が追い付くのだった。




