第4章 厄災の街 ナミヤ教グレデス教会④
「なんだ、もう戻って来たのか。それで何
か判ったのか?」
「危険が迫っている、ということだけね。
なんか僕たちを殺す算段をしていた。闇ギ
ルドを使うみたい。」
「闇ギルド?」
「暗殺を生業にしているギルドのことだよ。」
「ソニーは何でも知っているな。」
「何でもは知らない。知っていることだけ。」
「何当り前のことを仰々しく言ってるんだ、
そんな場合か。」
この男たちはあまりにも緊張感が足りない
と本来一番緊張感のないレイラは思った。
「それでどうするの?私とフローリアは戦え
ないわよ。」
「レイラ様は私がお守りします。」
健気にもフローリアが言う。但し、少し震
えながらだった。
「あなたは戦う必要はないって。こいつ等に
任せておけばいいのよ、強さは間違いないん
だから。」
「俺とルークとアーク、ソニーはよく判らな
いが、まあ生半可な暗殺者には引けを取らな
いさ。」
「そうは言うけど魔道で来られたらどうする
の?」
「そのときはお前に任せる。それとソニーか、
お前より結界を張るのは上手みたいだしな。」
そうだ。ルークにも気が付かれない結界を
ホテルでソニーは張っていたのだ。ルークは
アゼリア公の養子だがソニーは正真正銘アス
トラッド州のディーン=アレス侯爵の嫡男だ
った。それが魔道に長けているとは、本来公
言出来ないことだ。
シャロン公国において魔道士は剣士よりも
下に見られることが多い。自らの身を守れな
い若輩者や老齢者が魔道に頼る、という認識
だった。また、魔道士はその知識から術士と
いうよりも為政者の相談相手としての地位を
確立していた。但し、あくまで相談者として
ということであり、為政者そのものにはなり
得なかったのだ。
アストラッド侯の嫡男が魔道に関わってい
るなどとの噂が立てば家名に傷がついてしま
う。
「僕が魔道が得意だなんて噂を広げたらだめ
だよ。」
ソニーはお道化て言うが、本当のところは
結構切実に思っているはずだ。ルークにはそ
の辺りの機微は判らなかった。




