第11章 プレトリアの真実 魔道の国Ⅱ⑥
ジェイを魔道研究所に戻らせてルークは一人で宿へと戻って来た。
相変わらず街の印象は暗い。同じ港街だがレシフェの様に闘争が怒っている訳では無い筈なのだが。
「さて」
ルークは宿の前で立ち止まり中へは入らない。そしてそのまま方向を変えて別の道へと歩き出した。
宿からは少し離れたところでルークは急に細い路地に入った。
「ここでなら声を掛けられるんじゃい?」
誰も居ない路地に向かってルークが話しかける。
「気が付いていましたか。さすがですね」
そういいながら姿を現したのは50歳くらいの魔道士のローブを纏った見るからに高位の魔道士だった。
「初めまして、私はプレトリア州魔道士団副団長ヤキム?ドールと申します。ルークさんとお呼びしても?」
「どうぞご自由に。それでその副団長様が僕なんかに何の用でしょうか」
「僕なんか、などとはとんでもない。我が州の貴賓としてお招きするのが本来の筋だと思っているところです」
「それにしてはお姿を隠されて後を付けるなんて、あまり褒められたことではないと思いますが」
ルークの言う通りだった。ルークが誘わなければそのままずっと付いてきていただけだったろう。
「それは本当に申し訳ありません。ルーク様ご本人であることの確信が無かったものですから」
「それにしては魔道研究所からずっと付いてきておられましたが」
「そこからお気づきでしたか。本当に申し訳ありません。副団長などと名乗っておきながら自らの魔道の未熟さを露呈してしまっておりますね」
「そんなお話はどうでもいいので、御用は何ですか?」
慇懃丁寧な、但し心の中ではどう思っているか判らないヤキムの態度にルークは少し苛立っていた。
「御用と申しますか、少しお聞きしたいこともございますので、できれば一緒に城までお越しいただけませんか?」
「城というと、まさか」
「プレトリア州太守バイロン=レイン侯爵のお住まいである黄馬城でございます」
それは太守からの召喚命令とでも言うのだろうか。正式なものではないことは副団長が姿を隠して付いてきたことを考えるとあり得ないだろう。
ルークの身元や動向が太守の耳に入った、というか誰かが報告でもしたのだろうか。




