第11章 プレトリアの真実 魔道の国③
「リロン様は」
ロンがリロンの話を始めた。
レイン家現当主バイロン=レイン侯爵には三人の子供がいる。長男はタイス、ロックたちより二つ年上で次男リロンはロックたちと同年、妹のソフィアはリロンより二つ歳下だった。
リロン幼いころから何にも興味を示さない子供だった。早くから魔道に興味を持ち修行を始めた兄タイスとは違い魔道にも剣にも一切興味を示さなかったのだ。
タイスの魔道の才は平凡なものだった。どちらかと言えば攻撃的な魔道を得意としていたがタイスよりも高位の魔道士はプレトリア州に溢れていた。
プレトリア州には魔道学校がたくさん開校されている。剣よりも魔道に重きを置いている珍しい州なので剣士の道場よりも魔道学校の方が多かったのだ。
魔道学校には私塾も多かったが州立魔道学校に通っていたタイスは平凡な成績で卒業した。卒業が太守の息子だから忖度してもらった結果だと揶揄されても仕方ない位の成績だったのだ。
それに比べリロンは魔道学校に入るには入ったが一度も行かなかった。リロンとしては太守を継ぐ訳でも無い身なので好きなことをやらせてほしかったのだ。
ただ父であるバイロンはリロンが魔道学校に行かなかったことを表立って批判していた。タイスの様に成績が悪くても学校には通うべきだと言うのだ。
タイスがあまり身体が強くないこともその一因だった。万が一の時にはリロンが跡を継ぐことになるのだ。
タイスの様に身体が弱い訳でもないのに魔道学校にも剣士道場にも通わないリロンはバイロンから疎まれていたのだった。
病弱で魔道の成績も良くない長男。全く言う事を聞かない次男。バイロンと妻のラムシアの寵愛は娘であるソフィア一人に注がれていた。
プレトリア州都ザグレブの黄馬城ではソフィアに婿を迎えて女太守として立てられるのでは、とさえ噂されていた。
リロンとしては兄が太守を継いでも妹がついでもどちらでもよかった。ただ自分が継がなければいいのだ。太守になどなってしまったら自由が奪われてしまう、それが理由の全てだった。
リロンは実は魔道に興味が無かった訳ではない。本当は魔道を研究したくて仕方なかったのだ。
もしリロンが魔道に長けていると父バイロンに知られてしまえば長男を廃して次男であるリロンを太守に、と言い出すことは明らかだった。リロンの魔道の腕前は絶対に隠す必要があったのだ。
リロンとしては兄であるタイスが立太子され太守になることが自他ともに認める事態になった時初めて自身の魔道への探究を公にするつもりでいた。
ただ少し運命はリロンの想いを汲み入れない。父バイロンはリロンが二十歳になった歳、プレトリア魔道研究所の所長に抜擢したのだ。バイロンとしては学校に通わないのであれば仕事として強制的に魔道に携わらせることが目的だった。
リロンとしては本来自ら願っても就きたかった役職ではあるが兄が立太子させていない時期にはまだ早すぎた。こころ成果を上げる訳には行かなかったのだ。
現在そういった少し微妙な立場でいるリロンの意向を受けてロン=スアルはルークに接触して来た、と言うのだった。
「なるほどね。確かにそれは少し微妙な立場でもあると思うけど、それなら僕なんかに関わったら目立つことになってしまって余計に立場が悪くならないのかな?」
「リロン様は確信されたのだと思います。ご自信の魔道に対する探究心は最早抑えられない所まで来ているのだと。魔道研究所の所長になったことで兄上の立太子を待っていられないと思われたのだと」
「それは少しは判るけれど、そこに僕が関わってくることが理解できないんだよな。どうして僕なんだろう」
「その辺りはご本人にお聞きになってください。私はそのお話をする立場にはないのです。まあ知らないことはお話しできない、ということもあるのですが」
結局ロンの話だけでは何も判らない状況はあまり変わらなかった。




