第11章 プレトリアの真実 海路による東行⑧
「なんだよ、切り掛かってこなかったのか」
「なぜ俺がそんなことをしなくちゃいけない」
海賊の首領は自信満々だ。今まで剣で負けたことが無いのだ。
「そうかい?俺は強いぜ?」
「若造が。俺がどれだけの修羅場を潜ってきていると思っているんだ。俺たちは負けて捕まれば死刑だ。命がかかった戦いをお前がいままで幾度経験して来たというんだ」
バルバロスが死地を幾度となく乗り越えて来ていることは確かなのだろう。だがロックも経験では負けていないのだ。
「まあいいや、掛かってきたら判るさ」
「今行ってやるから焦るなよ」
バルバロスはゆっくりとロックに向かう。その動きは鈍い。いや、鈍いのではなく態とゆっくり動いているのだ。その動きに相手が慣れてしまうといきなり素早く動いて相手がついて来れなくなってしまうのを狙っている。
ただロックはそんなことでは崩れない。ゆっくりの動きからいきなり切り掛かって来たバルバロスの剣を余裕で受け流してしまう。
「なっ、なんだお前は」
バルバロスはいままでこんな経験をしたことが無かった。自分の動きについて来れる相手など会ったことがなかったのだ。
「ただただ遅いんだよ」
実際にはそうではない。バルバロスの速い時の動きは目を見張るものがあった。剣を受けて改めてロックは思った。マシュとももしかしたらいい戦いをするかも知れない、と。
バルバロスは『遅い』と言われて怒りの表情を前面に出して打ちかかってくる。もうそうなっては実力は出し切れない。ロックはただあしらうだけだった。
「そこまでかな。もうあまり面白くない。感情に任せて打ち込んでも鋭い剣にはならないよ」
ロックは年上のバルバロスに諭すように言う。バルバロスの剣を余裕で受け流しながらだ。
「くそぅ」
バルバロスの言葉は悪いが剣の腕は確かだ。
「どうする?降参するか?」
「そんな訳がないだろう」
ただバルバロスも最早ロックに勝てないことは判っている。どう隙を見つけて逃げるかを考えているのた。
「ディー!」
バルバロスが副首領を呼ぶ。
「そこの誰でもいい、船員一人を人質にしろ」
「判りました」
そう言われて直ぐにディーは動いた。が時はすでに遅かった。船員や傭兵たちは既にルークが拘束を解いてしまっていたのだ。




