第4章 厄災の街 港町ロス⑨
「それで、どうする?」
宿を脱出して当面の危機からは逃れたよう
だが馬車もなくロスの街を脱出する術がない
一行だった。また、それぞれの逃れる先も違
うはずだ。
レイラとフローリアはガリア州都ラースに
戻る、ロックとルークは修行の旅、自分探し
の旅を続ける、アークとソニーはアストラッ
ド州都レシフェに帰還する。
「こんなところに集まっておられましたか。」
そこにいた全員が声を聴いて驚いた。誰も
気配に気が付かなかったのだ。
「失礼、私はナミヤ教グレギス教会で大司教
を拝命しておりますサマム=シャイロックと
申します。」
「いま、どうやって現れた?」
「どうやって?何もおかしなことはしており
ませんが。あなたたちを見かけましたので、
お声を掛けさせていただいただけですよ。」
そんなはずがなかった。ロックやアークは
相当な剣の使い手であり、気配を隠して近づ
くなど並大抵の使い手でも無理だろう。この
初老の宗教者が達人だとでもいうのだろうか。
「いや、そんなはずはない。俺たちに気づか
れずに近づくなんて無理な話のはずだ。」
「私はただの老人ですよ。あなたたち青年を
導く者でありたい、と思っているだけの。」
何もかも胡散臭かった。魔道の達人、とい
うことも十分に考えられる。
「それで、その大司教様が何のようですか?」
魔道の気配を探りながらルークが尋ねた。
今のところ魔道を使った形跡がなかった。
「何、今このロスの街は疫病が蔓延している
ことは語損だと思います。あなたたちのよう
な旅の人をお守りするのは私どもの役目だと
心得ております。それで昨夜からお探しして
おりましたところ、ここでお見かけした次第
です。」
自ら問われることもなく昨夜の騒動が自分
の手の者の仕業だと認めている。というか、
隠すつもりがない、ということだろうか。
「確かに疫病が流行っているようですね。だ
からすぐにでも街を出ようかと思っているの
です。」
「それは無理です。」
「えっ、どうしてですか?」
思わずソニーが聞いた。何かの理由を付け
て拘束するつもりだとは思っていたが、あか
らさまに行ってくるとは思っていなかったか
らだ。
「この街を出ても他の街に入れないのですよ。
疫病を患っているかも知れない、ということ
で、どの街にも入れないのです。」
「それじゃあ、ここから出れないってことで
すか。」
「疫病が収まるまでの間、ということですが、
そうなりますね、残念ながら」
確かに情報が近くの街に伝わっているのな
ら十分考えられる話だった。人間としての胡
散臭さとは別に、丸っきりの嘘とも言い切れ
ない話だった。
「いずれにしても、ここは色々と危ないので
教会にお越しください。そこで今後のお話を
しましょう。」
いつの間にか教団員に囲まれていた。十分
突破できる人数ではあったが危害を加えられ
ている訳でもないので、悪戯に抵抗する訳に
も行かない。六人は大人しく付いて行くしか
なかった。




