第十章 アストラッドの悲劇 レシフェの争乱Ⅳ③
「お、ルークじゃないか。戻ったんだな」
「うん、ちゃんとサイレンを連れて来れた」
ルークの後ろには確かにサイレンが居る。ルークの影に隠れている感じだ。
「そうか、これでルシアとその黒幕ってのはなんとかなりそうだな」
「それはやってみないと判らないけどね。それで、この人は?」
「こいつがレフなんとかって言う『終焉の地』の剣士担当だよ、さっき行って捕まえて来たんだ」
「簡単に言うね。確か名はレフ=ガレンだったかな、強かったんじゃないの?」
「いや、そうでも無かった。楽しめなかったよ」
ロックは旅を続けるうちにどんどん強くなってきている。マゼランでの経験は大きく影響しているようだ。
「それは残念だったね。後は僕と彼女に任せてもらおうかな」
二つのファミリーの抗争は直ぐにでも止めないとどんどん死人が出そうだった。街の人たちにも被害が出てはいけない。
「ルーク、戻ったんだな。そちらのお嬢さんが?」
奥からカロムとルルが出て来た。
「そうです、彼女がサイレン。無理を言ってきてもらいました」
「はっ、初めましてサイレンと申します。お役に立てるかどうか判りませんがよろしくお願いします」
ルークはサイレンに一応概要は伝えてある。ただどちらが善でどちらかが悪だというような短絡的なことは言ってはいない。立場によって見方が変わってしまうからだ。
サイレンにはルシア=ミストを裏で操っている魔道士がいるので、その魔道士をルークが対応する間ルシアを制御して欲しい、と伝えてあった。
サイレンならルシアを御するのは容易いだろう。問題はルークの方だ。相手の力量が判らない。ルーク一人で対応できないかも知れない。
「今から行くか?それとも何か準備が必要なのか?」
「少し街の様子を彼女に見せたいと思います。それとルシアのいぱょの特定ですかね」
「それならあいつの居場所は常に把握してある。街の様子が必要なのか?」
「ええ、この街の現状を彼女に知ってもらいたいのです。その上で抗争を止める手伝いをお願いしたい」
「そんなものか。まあ出来るだけ早い方がいいい。それはお前も判っているだろう」
「ええ、もちろん。明日朝から少し街を回って、上手く行けば午後にでも行きましょう。今日の所は旅の疲れもありますから」
そうしてサイレンのレシフェでの初めての夜を迎えるのだった。




