第十章 アストラッドの悲劇 レシフェの争乱Ⅳ②
「お前今何をした?」
「種明かしする訳がないだろ。さっさと捕縛されるんだな」
カロムが直ぐにレフを縛り上げた。そのまま拠点に連れ戻るのだ。
「おっおい、待て、俺をどうするつもりだ?」
ロックたちは応える義理はないが答えてはいけないこともない。
「これ以上剣の指導をしてもらっちゃ困る、ってことだよ。それと人質かな」
「俺を人質にしてもルシアは交渉には応じないぞ。切り捨てられるだけだ」
「なんだ、自分の立場はちゃんと理解しているんだな」
ロックも最初からレフを人質にして何かの譲歩を引き出そうとは思っていない。剣士がこれ以上増えなければいいだけなのだ。
「レフと言ったか、終焉の地ではお前が一番の剣士なのか?」
拠点に戻るとすぐにロックが興味をもって聞く。ロックの興味はそれしかない。
「まさか。俺はそうだな10番目くらいには強い」
「なんだ、あと9人しか居ないのか。それで、えっとなんて名前だったか、ルシアの兄とか言う奴」
「フロウ=ミストのことか」
「そう、そのフロウってやつは何番目なんだ?」
「フロウは最高幹部だ、剣の腕は関係がない」
「いや、そうだとしても強さには順番もあるだろう。少なくともお前よりは強かったぞ」
ロックはマゼランでフロウを捕まえたことがある。その時に立ち合ったがかなりの強さだった。
「フロウとはあまり立合ったことが無いが多分二番か三番目だろう」
「ほほう、あいつよりも強い剣士が一人か二人は居るってことだな、そいつの名は?」
「言う訳がないだろう。仲間を売るくらいなら死を選ぶ」
終焉の地は闇ギルドではあったが幹部連中はある程度の矜持を持ち合わせて居るのだ。
「まあいいや。強い奴が居るってことが判っただけでもいい。どこに行ったら会えるんだろうな、それも教えてはくれないよな?」
「聞くまでもない」
「何の話?」
突然口を挟んだのはサイレンを連れて戻ったルークだった。




