第十章 アストラッドの悲劇 レシフェの争乱Ⅲ⑩
レフ=ガレンはドランファミリーの拠点でも本拠の次に大きい場所にいる。ただ、構成員たちは街中を荒らしまわっていて残っている人数は少なかった。
「いい感じに人が少ないな、行くか」
カロムに言われなくてもロックはそのまま突っ込むつもりだった。レフ以外は正直何人いても大して支障にはならないだろう。
「いつでもいいぜ」
二人は正面から建物に入って行った。
「おい、なんだお前たちは」
残っていたチンピラに呼び止められる。
「おい、お前まさかカロム=ザードか」
一人はカロムの顔を知っていたようだ。
「ああ、そうだな、確かそんな名前だった」
カロムは人を馬鹿にした返答をする。
「なんで、ここに」
「決まっているだろう。殴り込みに来たんだよ」
そう言うとそこにいた数人を一瞬のうちにカロムは倒してしまう。ただロックの手前命までは取らない。腕を狙って剣を持てなくするだけだ。
「なんだよ、ちゃんとできるじゃないか」
ロックが茶化す。カロムがロックに気を使って相手を殺さないようにしているのが意外だったのだ。
「殺したらお前やルークに怒られるだろうに」
「判っているならいいさ。でもまあ自分の命はちゃんと守れよ」
「それは大丈夫だ、この程度の奴らには引けをとらないさ」
表での騒ぎを聞きつけたのか、奥から人が出て来た。
「なんだお前たちは。これはどうした?」
レフらしき男も一番後ろに控えている。その前には10人のチンピラ。ただちゃんと剣を構えている。
「雑魚の相手は俺だ、さっさとかかってこい」
カロムに数人が殺到する。ロックにも切り掛かろうとしているがロックは簡単にそれらを往なしてレフに近づいた。
「お前が俺の相手と言うのか」
「あんたがレアとかなんとかいうやつか?」
ロックは敢えて安い挑発をする。最初から本気で掛かってきてもらわないと一瞬で終わりそうだからだ。




