第十章 アストラッドの悲劇 レシフェの争乱Ⅲ⑨
「こちらから仕掛けてみるか」
カロムはやる気満々の様子だ。
「居場所は掴んである」
密偵を放ってドラン側の動向は逐一報告が上がってきているようだ。元々ある程度の情報は入るようにしていたのだがル
シアが来てからは見つかってしまって情報担当の構成員が何人か捕まってしまっていた。
仕方なしに数少ない魔道士を雇って動向を探らせているのだ。但しルシアが居る本拠は探れないので他の拠点を見張らせている。
ドレン側の剣の指南役レフ=ガレンはルシアとは仲が悪いようで別の拠点に滞在して剣を教えているのだ。
「そこを襲って指南役を一旦退場してもらおう」
カロムの言い方は大人しそうだが本当は退場では済まない筈だ。
「とりあえずそいつを抑えればこれ以上剣士モドキは増えないだろう。そうするとやはり気にしなければならないのは魔道士とその黒幕ってやつだな」
「そっちはルークに任せるさ。で、指南役は俺担当でいいんだよな?」
ロックとしては正々堂々と戦いたい。回りま雑魚はカロムに任せたいのだ。
「いい所だけ持って行くつもりか。まあいい、そいつはお前に任せよう」
ロックとしては決着だけが付けば生き死にの問題にはしたくなかった。カロムが相手をすると勝った場合相手を確実に殺してしまうだろう。
「行くなら早い方がいい。少しでも剣士モドキを増やさないためにもな」
カロムの言い分はもっともだ。剣士モドキは剣を持っているだけで厄介には違いないが普通に基礎を教わった者が大量発生すればどんどん不利になって行くだろう。
「では出来るだけ人が手払っている時を選んで突入することにしようか」
相手の若い構成員は一人一人は取るに足らないが人数を揃えられると万が一ということもある。ロックにはできるだけ他のことに気を取られないところでレフを倒して欲しいとは、カロムも少しは思っているのだ。
「カロム、まさか二人でいくのですか?」
黙って聞いていたルルが口を挟んできた。カロムとロックの二人が出てしまうと本拠の守りが薄くなってしまう。
「すぐに戻りますよ、とりあえず剣士を無力化しておく方が後々のためです」
「いえ、それは私も判っています。二人だけで行って怪我でもしないか心配なのです」
ルルは自分のことよりファミリーの誰かが怪我をしたいすることが本当に厭なのだ。
「二人なら大丈夫だ。逆に他の者を連れて行ったら、そいつらの面倒を見る余裕はないからな」
カロムは強がりを言っている訳ではない。ロックとなら十分やれると信じているだけだった。




