第4章 厄災の街 港町ロス⑥
「他に現状で知っていること、判っているこ
とはないの?」
「ロス港湾局長は亡くなったらしい。港湾局
もほとんどが疫病の餌食で機能していない。
あと、医者たちも全滅らしい。」
「だしとたら、ロスは今誰が管理しているん
だろう?」
「今はナミヤ教の司教が指揮を執って治安を
守っているという話だ。大司教だったかも知
れない。」
「司教でも大司教でもいいが、そのナミヤ教
がなぜ?」
「街の有力者が悉く疫病に倒れて、ナミヤ教
のご加護で健全だった大司教が、という話の
流れらしい。」
ナミヤ教とは聖都セイクリッドにセイクリ
ッド大聖堂がありシャロン公国全土に信者を
持つ公国で一番の宗教だった。
また、聖都には教皇庁があり、レフ=シャ
イロック教皇の元、数人の枢機卿が教団を司
っている。主要な都市には教会があり、大司
教や司教が布教の拠点としている。
ロスにもグレギス教会が置かれサマム=シ
ャイロック大司教が全てを司っている。その
サマム大司教が今のロスを取り仕切っている
のだった。
「それで、さっきから俺たちを捜しまわって
いるのは、もしかしたらその大司教様の仕業
なのか?」
「どうもそうらしいね。ナミヤ教が僕たちに
何の用があるんだろう。いずれにしても真夜
中の来訪にいい知らせは期待できそうもない
ね。」
「じゃうどうする?」
「ここにずっと居る訳にもいかないだろうか
ら、とりあえずは、逃げるしかないかな。」
「ソニー、そう言うが、実際ここから逃げる
となると事だぞ。」
「判っているよ、だから彼らにも手伝って貰
うとしよう。」
ソニー=アレスはロックたちを見て少し意
地悪そうに笑った。




