第十章 アストラッドの悲劇 レシフェの争乱Ⅲ
「それで人を集めてどうするんだ?
殴り込みにでも行くつもりか?」
ロックの疑問はその通りだった。構成員を全員集めて集団でドレンファミリーのアジトを襲撃するとでも言うのだろうか。
「とりあえずは個々に襲撃されることを防ぐためです。でもここだけでは収まり切れないですね」
アジトの建物は大きいが多分三分の一も入れない。物理的に文才する必要があるようだ。
「でも集めてしまったら一網打尽にやられてしまうかもしれないぜ?」
確かに大規模の魔道を使われるとその可能性はある。但しそんな魔道はルシア本人ならまだしも昨日今日魔道を憶えたドレンの構成員では無理な話だ。そして今はルークが居る。ルシアも理解している事だろう。
「そこはお仲間がいれば大丈夫でしょ?」
ルルは頭の回転が速い。何見言わなくても本質を素早く掴んでくる。数日一緒に居ただけだがロックはその辺りを痛切に感じていた。
情報を集め的確な判断で対応する姉とそれを実行できる力を持っている弟、二人はいいコンビだと思われる。
「それはそうなんだろうけど、何か所も別れたら無理だぜ?」
「確かにな。ただ出来るだけ大人数で一緒にいることはいいんだと思う。大きな拠点は5つ、4つはここよりは小さいがそこそこの人数を収容できるだろう」
今のところ話は防御についてのみ行われている。ルークは意外だった。人を集めて今にも襲撃に向かうのではないかと思っていたからだ。
「守りを固めるのはいいが、こちらから攻めないのか?」
ロックも同じことを考えていたようだ。ただロックもルークも攻めろと思っている訳ではない。
「なんだ、血で血を争う抗争を止めたいんじゃないのか?」
「当り前だろう。誰も攻めて行けなんて言っていない。さっきのルルの状態からするとすぐにでも行きそうだったのが一旦止まったので少し驚いただけだ。俺が立ち塞がってでも止めようと思っていたからな」
「おい、お前一人で止められるとでも思っているのか?」
カロムが凄む。
「できないと思っているのか?もしそう思うのならやってみることだな」
ロックも応える。ただ現実的ではない。いくらロックどに一度に数百人に囲まれると身動きできないだろう。ただし、それはロック単独の場合だ。そこにルークが加わるとまた話が変わってくる。
「確かに一人では無理だろうが」
「ああ、なるほどな。ただお前たちが揃わない場面もあるだろうに」
カロムとロックは言い争っているようでそうではない。ロックたちの実力を知らない幹部たちに二人のことを紹介している、くらいのものだ。




