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虹の戦記  作者: 綾野祐介
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第4章 厄災の街 港町ロス⑤

(何か錚々たる面々が集まっているようだが、

この状況は誰か何とか出来ないもんかの。)


 ジェイが堪りかねて話を進めようとした。

確かに現状を打破することは容易ではないと

思われる。


「廊下の連中は何者なのかな?」


「僕たちにも判らないんですよ。でもあなた

たちには気が付いていなかったとしたら僕た

ちを探しに来たことは間違いないようです。」


「それで今のこの街の状況は把握している?」


「それも残念ながらいいえです。昨日着いた

ところで何もわかっていないのが正直なとこ

ろです。少しでも情報をお持ちなら共有して

いただけると助かります。」


「そんな虫のいい話はないだろ。」


「いや、アーク、ここは協力した方がいいと

思う。僕たちも足止めをくらって途方に暮れ

ていたじゃないか。」


「馬鹿、こっちの実情を無償でばらすやつが

いるか。協力するにしてもこっちに有利に。」


「そんなこと言ってる場合じゃないって。」


「そうですよ、アークさん。ここはお互いの

利益のために条件なしで協力し合うことが必

要ですよ。」


 アークは不満顔だったが、確かに協力する

方が得策だとは理解していたから、それ以降

は口出しをしなくなった。


「何か疫病が発生している、とは聞いたので

すが。ロスの半数が死んだ、とも。」


「そうだね、確かに半数は大げさだけどかな

りの人が疫病に倒れているらしい。僕たちも

ロスに戻ってきてすぐに騒ぎに巻き込まれて

しまって仕方なしに結界を張ってこの部屋で

やり過ごしていたんだ。」


「何日くらいここで?」


「まだ5日目だよ。それでこの有様だ。この

病の流行り方は尋常じゃない。」


「普通の病気じゃないと?」


「そうだね。医者が話しているのを少し聞い

たけど全く原因が判らないそうだ。どうした

らうつるのか、どうしたらうつらないのか、

どうしたら治るのか、何一つ判らない未知の

病だそうだ。」


「少し聞いた症状からすると黒死病に近いよ

うです。」


「黒死病?」


「そうです。ただここで何と呼ばれているの

かは定かではありませんが。」


「ここで?」


「なんだお前はどこから来たんだ?」


 ルークの物言いにひっかかったアークが尋

ねた。


「どこから、というと直接にはラグやアドニ

スになるのですが、出自を聞いているのなら

判らない、としか答えようがないのです。」


「ルークは記憶がないんだよ。ラグで気が付

いた時より前は何も覚えていないそうだ。」


「記憶喪失?まあ、そんなこともあるでしょ

う。不思議ではありますね。」


「まあいい、それより黒死病とはなんだ、ど

うしたら防げる、治るものなのか?」


「僕も詳しくは判りません、専門家ではない

ので。ただ肌が黒く変色したり、死亡率が高

かったり病状を見ると黒死病の可能性は高い

と思います。もしそうなら感染経路はネズミ

かも知れません。病原体を持った蚤をネズミ

を媒介として広げている、と言うことだと思

います。」


「そうなのか?」


「僕にも判らないよ、アーク。僕にはそんな

知識は無いし薬師でもないから治療方法は皆

目だね。でも、君はなんでそんなことを知っ

ているの?」


「さあ。一般的な知識程度は知っている、と

しか言えないのです。」


「一般的じゃないだろ。いいさ、それでどう

したらいい?」


「街中を殺菌してネズミとかの媒介するもの

を排除するしかないでしょうね。」


「ネズミ駆除か。大掛かりでやらないと意味

がないよね。」


「そうですね。」


「でもルーク、誰がそれをこの街の人々に伝

えて実行してもろうんだ?」


「僕たちはただの旅人だから、そんな若造の

話は聞いてくれないだろうね。」


 一行にはなかなか妙案が思いつかなかった。


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