第4章 厄災の街 港町ロス④
「一つ質問してもいいかな?」
「深夜の無理やりな訪問者に、答える義務は
ないぞ。」
「アーク、まあ、聞くだけでも聞いたらいい
じゃない。」
「お前はいつも優しすぎるんだよ。まあいい、
で、何?」
「さっきこの宿の中には全く人の気配がなか
ったんだけど、ずっとここに居たの?」
「ああ、結界を張っていたからね。感知でき
なくても仕方ないよ。」
「やっぱり。ジェイにも僕にも気づかれない
なんて君はかなり高位の魔道士なの?」
「それには答える気はないよ、生憎だけど。
君たちが敵か味方か判らないうちは、ね。」
ソニーと呼ばれた青年が相当な使い手であ
ることは明らかだった。今も廊下を捜してい
る男たちからはこの部屋が認知できないよう
だ。ルークたちも逆側の部屋がレイラたちの
部屋じゃなかったらこの部屋の窓に気が付け
なかったかも知れない。
「判った、自己紹介が先か、俺の名前はロッ
ク=レパード、こいつはルーク=ロジック、
そっちはレイラ=イクスプロウドと侍女のフ
ローラ、そんでもってそこで浮いてるのがブ
ラウン=ジェンキン、ジェイだ。」
「そんな名前だけ紹介されても。でも、ロッ
ク=レパードって聞いたことがあるかも。」
「なんだ、ソニー。知ってるのか?」
「確か今年の御前試合の優勝者がそんな名前
だったはず。その時決勝で負けたのがシオン
=イクスプロウド、ガリア公の嫡男だったけ
どレイラってもしかして。」
「シオンは兄です。」
「なるほど本物の優勝者って訳か。」
「俺が出ていたら俺の優勝だったがな。」
「アークが出ていたら、まあ準決勝あたりが
順当じゃない?」
「なんだと!」
アークは本気で怒っている訳ではないが、
そっぽを向いてしまった。
「でも、まさかロジックってアゼリア公の関
係者とか?」
「彼はヴォルフ=ロジック公の養子だよ。」
「へぇ、面白い取り合わせだね。そしてアー
クはアストラッド騎士団長の嫡男。」
「そう言うお前はアストラッド公の跡取りだ
ろうが。」
何か運命的と言っても過言ではない出会い
だった。




