第4章 厄災の街 港町ロス③
「あとは、ここの4人だけだな。」
ドアの外で声が聞こえる。但し、中に聞こ
えないように声を抑えているようだ。
「こっちにの部屋には誰もいません。」
「なんだと?2人づつ2部屋に、という報告
だったが。すると、こちっちに集まっている
のか。」
「さっさと捕まえればいいだろう。」
「わかっておる。急かすでないわ。中に知れ
たらどうする。」
「いや、もうどこかに逃げてしまっておるか
も。気が付かれたかも知れん。」
何者かが合鍵でドアを開けようとしている。
「ん?鍵は開いたが扉は開かないぞ。どうな
っておる?」
「どれ、どいてみろ。ん、確かに開かんな。
何かで扉が開かないようにしているようだ。」
「やはり、気が付かれたか。どうする?」
黒づくめの僧服のような格好の三人はひそ
ひそと相談している。
「とりあえず、これで扉は開かないと思う。」
「それって魔道か?」
「そう、応用だけどね。扉が開くことを禁止
したんだ。でも、そんなには持たないよ。」
「判ってる、すぐにでもここを出よう。」
「でもどうやって?ここ、三階だよ。」
「飛び降りるか?」
「僕やロックはまだしもレイラやフローリア
には無理だよ。」
「だよな。わかった、窓越しに隣に逃げよう。」
少し間は空いていたが隣の窓にはなんとか
手が届く距離だった。レイラたちの部屋は鍵
を開けられてしまっているから逆の部屋に逃
げるしかない。但し鍵がかかっている。
「ジェイ、お願い。」
(皆まで言うでない、わかっておるわ、窓の
鍵を開ければよいのであろう。)
「さすが猛禽類の王。」
(今の言い方には多少の尊敬が入っておるよ
うだの、まあ、追々我の力を頼ってくるよう
になろうよ。)
「頼むよ、ジェイ。」
ジェイのお陰でなんとか隣の部屋に逃げる
ことが出来た。が、隣の部屋には人が居た。
「ごめんなさい、人が居るとは思わなかった。
ちょっと追われているんだ、大きな声を出さ
ないでもらえると助かるんだが。」
確かジェイも宿には他に誰も居ないと言っ
ていたはずだが、見落としていたのだろうか。
(違うぞ、確かにこんな奴はさっきまで居ら
なんだ。こやつ、気を付けるがよいぞ。)
「こんな夜分に非常識極まりないね。追われ
ているのは君たちが何かやらかしたからだろ
う。それなら自業自得というものだ。さっさ
と出て行ってくれないか。」
「どうしたの、アーク。」
もう一人の宿泊客が起きて来た。二人とも
ロックたちと同年代の若者だった。しかし、
二人も気配を見落とすなんて、さすがにあり
得ない。
「ソニー、起きたのか。なんだか、こいつら
が窓から入って来て、追われているから助け
てほしい、とかいうんだ。」
「ふーん、そうなんだ。いいんじゃない?変
な人には見えないし。そこに浮いてるネズミ
には少し興味があるけど。」
「えっ、君はジェイが見えてるの?」
「ああ、姿を隠してたんだね。うん、見えて
るよ。」
もう一人の身のこなしも普通じゃないし、
二人とも若いが要注意のようだ。




