第4章 厄災の街 港町ロス②
(おい、お前たち、なんだか変だぞ。)
「ん?どうしたんだジェイ。」
(人の気配がしない。)
確かにロックたち以外の人の気配がしない
ようだ。真夜中を過ぎているので寝静まって
いるだけ、ということも考えられたが、どう
もそれだけではない様子だ。
「ホントだ。何かあったのか?」
(判らん。我も今さっき気が付いたのだ。)
「なんだよ、寝ないで見張ってくれてたんじ
ゃなかったのかよ。」
(そんな訳がなかろう。我を何だと思ってお
るのじゃ。)
「ただ働きの見張り番?」
(お主とはいずれ決着を付けねばならんな。
そんなことより、皆を起こした方がよいので
はないか。)
「もう起きてるよ。確かに変だね、ロック。」
「うん。レイラたちを起こした方がいいかも
な。」
「判った、僕が行ってくるよ、君が行ったら
襲いに来たと思われるだろうから。」
「この扱いの違いは何なんだ?」
(日頃の行いの違いではないか?)
「黙れ、この化けネズミ。」
(齧歯類ではないと何度も言っておろうが。
我は誇り高き猛禽類の王である。)
「はいはい。」
(お主は我の話をまともに聞く気がないな。)
「ご名答!」
「何二人で漫才やってんのよ。どうでもいい
けど寝不足はお肌の天敵なんだからね。」
「おいルーク、どんな説明して起こしたんだ
よ。」
「話は判っているわ。何か不穏なことになっ
ているようね。」
急にレイラが声のトーンを落として真顔に
なった。ルークは、やれやれ、と言いたげな
顔をして肩を竦めた。
「それで、どうするのよ。」
「とりあえずは現状把握と情報収集だろうね。
今ロスで何が起こっているのか、この宿で今
夜何が起こったのか。」
「ジェイ、少し辺りを見てきてくれるか、姿
は消して。」
(判っておる。いま暫らく我が戻るのを待っ
ておれ。)
「さすが、猛禽類の王さま!」
ジェイはロックの冷やかしを無視して、ふ
っと消えた。
「みんな急に病気になって連れて行かれちゃ
ったのかな。」
「それなら俺たちも気が付いたはずだ。まあ、
ジェイの帰りを待とう。」
ほどなくジェイが戻ってきた。
(何も居らんし誰も居らんぞ。)
「そうか、やっぱり。ルーク、どう思う?」
「情報が少なすぎて判断が付かないよ。」
「じゃあどうするの?このまま、出る?」
「ちょっと待って。誰かが来る。」
四人は息をひそめて聞き耳を立てた。確か
に複数の人間が階段を上ってくるようだ。こ
んな時間の来訪者には悪い予感しかしなかっ
た。




