第九章 杜の国 サイレンの魔女Ⅱ⑤
「少し時間が掛かるが」
突然シェラックが話し出した。何かを考え付いたようだ。
「どのくらい?」
「そうだな、まあ、5日というところですかね」
「それで何を待つんですか?」
「多分あなたもそれが目的なのではないですか?」
やはりこの男は頭の回転は速い。それがいいことなのか悪いことなのか。
「そうだすね、それで5日あれば連絡が取れると?」
「というか、ここに来ていただきましょう」
「ノルン老師をここへ?」
「ええ、その方が手っ取り早い。師匠もサイレンのことなら動いてくれるでしょう」
「やはりサイレンはノルン老師の関係者だったんですね」
「ああ、私の兄弟子というところです。姉弟子と言うのが正確ですかね」
ノルン老師の下で魔道の修行をしていた同志、ということのようだ。
「時を止める魔道についてはご存じないですか?」
「いや、ノルン老師はそんな魔道を研究していなかったと思いますよ。それにブランは影のガルドの弟子でしょう。しかしガルドが時を止める魔道を使うとも聞いていない。もしかしたら最近習得したのかも知れないですが」
「そうですね、やはり時を止める魔道ならクローク老師でしょうか」
「君の師匠の時のクロークか。でもクローク老師が時を止められるとは、それも聞いたことが無いな。遅くしたり速くしたり時を操る魔道士だと聞いていましたが」
「師匠はそんなことが出来る魔道士だったのですか?」
「なんだ知らなかったんですか?」
「ええ、魔道の基礎しか習わなかったものですから」
「それで今その実力なのですか?何か不自然では?どうも熟練の魔道士の様に見受けられますが」
「言われた日々の修行は怠らなかったので」
「それだけでは説明が付かないと思いますが。まあいいでしょう、とりあえず先にノルン老師に連絡を取ってみます」
それからノルン老師は4日でサイレンの街に現れた。




