第九章 杜の国 サイレンの魔女Ⅱ④
(なるほどな)
「ジェイはいい考えがあるかい?」
(すまんが儂には無いな。ただ一つ)
「一つ?何か心当たりでも?」
(心当たりというか、まあ聞いてみたらどうだ?、という相手は居るな)
「本当に?誰です?」
(多分もうすぐこの街に着くだろう、あの男だ)
「ああ、そう言うことね」
名前を言わずともルークには伝わったらしい。
「確かに師匠筋に氷のノルン老師が居たはず。サイレンも雪を操るんだから同系統の魔道士なら何か知っているかも知れないね」
(そうであろう。儂も役に立つ時があるのではないか?)
「大丈夫、いつも役に立っているよ、看守しているんだから」
(その割には時々完全忘れておらんか?)
ルークは図星だったのだが、表情には出さない。いや、出さないつもりだったが、ジェイには隠せなかった。
(まあよい、そろそろ街に入りそうだぞ)
「判った、出迎えに行ってくるよ」
ルークはアークに事情を話して街の入り口までシェラック達を迎えに出た。
「やあ」
「なんだ、ルーク=ロジックではないですか。まだこんなところに居たんですか?もう疾の昔にレシフェに着いている頃だと思いました」
「色々とあってね」
「ルークさん、お久しぶりです」
「やあ、ユスティ。それほど久しぶりでもないけどね」
「そうですね。でも結構旅路が過酷だったので」
「それは大変だったね。それはそうと聞いて欲しいことが有って待ってたんだ、少しいいかな?」
ルークはソニーの母親のことは触れずにサイレンのことだけ説明した。
「サイレン=ウインドか、なるほど」
シェラック=フィットは自らの記憶を探っているようで反応が無くなった。
「るーくさん、少しお待ちください。多分直ぐに回答を出してくれる筈です」
ユスティにそう言われては、ルークはその場でただ待つしかなかった。




