第九章 杜の国 レイリク鍾乳洞⑨
「元々『終焉の地』を雇った人、ということになります」
人払いをしてソニー、アーク、ロック、ルークの四人になったところで再びソニーが話し出す。
「それは判っているのですか?」
「いや、はっきりとした証拠は結局掴めなかった。ただ状況からして《《あの》》人しか居ないと思っているんです」
ソニーは吐き出すように言った。
「ソニー、証拠が無くても決まりだろうよ」
アークも珍しく同じように苦々しい表情を浮かべた。二人の共通認識のようだ。
「一番の問題は父が何もしない、ということだと思っているのです」
「知っていて、と言う意味?」
「そういうことです。もしかして父も最初から関わっている可能性すらあると思っています」
そんな話を部外者である自分たちに話していい物なのか、とルークは心配する。ただ、ソニーのことだ、何かに巻き込もうとしている可能性もある。
「それなら太守を討てばいいじゃないか」
「おいおい、そんな簡単な話じゃないぞ」
ソニーではなくアークが窘める。
「ロック、迂闊なことを言っては駄目だよ」
「なんだよ、難しいものなんだな」
「太守を討てばいい、なんて流石にロックでも駄目」
「色々と問題になるか。でもソニーが太守になればいいんじゃないか?」
ロックはロックなりにソニーの敵討ちを手伝いたいと思ったのだろう。ただ、相手は実の父なのだ、やはり単純な話しではない。
「ソニーはそれも難しい、と言っているんだよ」
ロックは、言ってたか?と思ったがルークのいう事には逆らわないことにしていた。
「ルーク、それは言ってない」
ソニーが笑いながら応える。
「まあ、合ってるけどね。僕は確かに長男だけどパーンという弟がいるんだよ、母の違うね。父は弟を跡継ぎにしたい、ってことさ」
ソニーの表情からは何も読み取れない。達観している、とでもいうのだろうか。
「それじゃあ、ここも守らないといけないし自分自身も守らないといけないじゃないか」
「そうなるね。だからここはアークに任せて僕は出来る限りアストラッドを出ているようにしているんだよ」
それが今アストラッドに戻ったということは、何か事情が変わったという事か。
「アークの隊以外は騎士団も信用できないのが辛いところさ」
ソニーの言葉は自虐以外の何物でも無かった。




